世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年12月4日

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 11月14日付けの英Economist誌の社説は、バイデン次期政権は同盟を重視することとなるが、米国の同盟諸国は自らの役割を十分果たすよう努めるべきである、と述べている。

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 バイデン次期米国大統領の外交政策は、「米国第一主義」を掲げたトランプ現大統領とは大きく異なり、民主主義、人権、法の支配の下、同盟関係と多国間主義を重視し、米国が再び自由世界のリーダーとして振る舞っていくものと思われる。これは米国の歴史から言えばトランプが異色であったのであり、米国の伝統に戻るということである。

 ただ、バイデン次期政権の外交政策を取り巻く状況は厳しいものがある。一つには、バイデンが、まずは内政を優先させなければならない事情がある。いま米国は新型コロナウイルスの急速な拡大に見舞われており、バイデン政権は早急にその対策に取り組まなければならない。

 また、新型コロナウイルスの蔓延で疲弊した経済のテコ入れを図る必要がある。コロナ前、歴史的低さを記録した失業率はコロナで急上昇し、雇用の確保は喫緊の課題である。

 その上、上院で共和党が多数を占める可能性がある。現時点で共和党が50人、民主党が48人で、残りはジョージア州であるが、来年の1月5日に通常選挙の1議席と補欠選挙の1議席の投票が行われることとなっている。もし共和党がどちらかの議席をとれば51人となり多数を占める。共和党が多数を占めると、外交事案では上院が中心的な役割を果たすので、重要な外交案件が人事を含めバイデン政権の思惑通りにはいかない恐れが出てきて、バイデン外交が足を引っ張られる恐れが出てくる。

 したがって、バイデンが同盟国重視の外交を少しでもスムーズに実施するためには同盟国側の努力が必要になる。具体的には、まずNATO加盟国が国防費支出の増大に努めるべきである。NATO加盟国は、2024年までに国防費支出をGDP比で2%以上に増やす目標があるが、2018年現在で目標を達成した国は7カ国にとどまり、主要国では英国のみであった。バイデンはトランプと異なりNATOを恫喝するようなことはしないだろうが、NATO 加盟国の国防費支出の増大を求めることは間違いない。NATO加盟国は、NATOを重視するバイデンに応えるためにも国防費の支出増大に努めるべきだろう。

 アジアで最も重要な問題は対中国政策である。中国批判は今や米国の主流となっている。スタイルはトランプとは異なるであろうが、バイデンも基本的には中国に対し強硬な立場をとると思われる。日本をはじめとするアジア諸国はバイデン政権と中国政策につき十分に意見交換し、調整を図るべきである。

 米大統領選挙でのバイデンの勝利に、世界、特に日本をはじめとする米国の同盟国が安堵したのは事実である。米国の同盟国は、安堵を超えて、同盟重視を掲げるバイデン政権に、軍事、外交、経済等様々な分野で、具体的に協力していく必要がある。

  
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