世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年11月23日

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 英フィナンシャル・タイムズ紙編集長のフィリップ・スティーブンスが、11月6日付の同紙に、バイデン政権成立の場合の対外政策について、その限界を論じるとともに、同盟諸国がバイデンに国際主義を維持させるためにより多くのことを為すべきことを説く論説を書いている。

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 「西側」(自由と民主主義)諸国の骨組みを修復するためには、米国の同盟諸国が、国防費増額以上のより多くのことを為すべきだとのスティーブンスの論旨は全体として首肯出来るものである。

 バイデン政権にとって、焦点はまずは国内問題にあり、米国を再生させるための投資に焦点を当てることになろうが、それはそれで構わない。今回の選挙でも、48%の有権者がトランプに投票し、米国の分断の状況が露呈した。荒れた国内の状況を改善し、国としての一体感を取り戻すことが積極的な対外関与の前提であろう。

 来年1月20日の就任初日から、新型コロナ・ウィルスのパンデミック対策に取り組み、サプライチェーンの再構築の作業を始めるともバイデン陣営は言っているようである。

 だからと言って、バイデン政権が突如として対外関係に関心を失う訳ではない。バイデンは気候変動に関するパリ協定およびWHO(世界保健機関)に直ちに復帰する。イラン合意への復帰も約束している。バイデンは一年目に民主主義の首脳会議(a summit for democracy)を招集したいとしている。バイデン政権には外交に経験と見識のある人達が参画して責任のある地位に就くであろう。出入りの激しい素人の寄せ集めのようなトランプ政権とは全く異なる政権を期待し得よう。

 そういう前提で大雑把な印象を言えば、欧州方面はほぼ心配がない。心配はアジア、とりわけ対中国政策をどうするつもりかということになろう。トランプ政権の功績の1つは、中国の問題のある行動を遠慮なくあぶりだしたことにある。対中政策を根底から覆したことがその最大の遺産である。その手法は予測不能な乱暴なものであったが、米国内では中国に対する強硬論が定着したと見られる。多くの国が中国に対する警戒感を高めることにもなった。ポンぺオ国務長官の積極外交もあり、「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する「クワッド(日米豪印の4か国協議)」も開催された。米国と台湾との関係も、現職閣僚や国務次官が台湾を訪問するなど急速に接近した。

 バイデン政権には中国の無法な野心や規範を逸脱した行動には毅然と対応することを求めたい。その前提で中国との安定的な関係を模索することは適切と思うが、それもトランプ時代の対中政策が基礎とならざるを得まい。対中高関税をどうするのか。Huawei潰しはどうするのか。カナダに逮捕させたHuaweiのCFO孟晩舟はどうするのか。簡単に整理はできないように思われる。トランプ政権はあと2ヶ月余り続く。対中政策の転換阻止を狙って新たな一手を打つ可能性がないわけではないであろう。

  
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