2023年1月27日(金)

Washington Files

2020年11月30日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

ロシアとの「新戦略核兵器削減条約」(新START)

 第二は、来年2月に失効を迎えるロシアとの間の「新戦略核兵器削減条約」(新START)とどう向き合うかという問題がある。

 同条約は2010年3月、オバマ大統領とメドベージェフ露大統領(いずれも当時)との間で最終合意に達し、翌2011年2月に双方の議会批准をへて発効したもので、①ICBM、SLBMおよび戦略爆撃を合わせた核運搬手段総数を800基に制限②このうち実戦配備数を双方700基とする③戦略弾頭数を1550個に制限する―などを明記しており、実質的核軍縮面でかつてなく大きく進展を遂げたものだった。

 また、10年間の期限が切れる来年2月には失効するものの、同条約に「5年間延長」の規定が盛り込まれており、ロシア側は延長の構えを見せている。

 しかし、トランプ大統領は新STARTについて就任当初から否定的見解を示し、今年に入ってからも、一貫して「延長せず」の姿勢をとり続けてきた。延長反対の主な理由として、米露両国が同条約に拘束される間に、条約対象外の中国が核戦力強化に乗り出していることなどを挙げた。そして同条約に代わり、米露に中国を加えた新たな3国核軍縮交渉の開始を提案している。問題は、肝心の中国がこの案に全く関心を示していないことだ。

 これに対し、バイデン氏は「新STARTの延長こそ新たな核軍縮合意の基礎になる」として、ロシア側の主張に理解を示してきた。しかし、プーチン露大統領今のところ、先の米大統領選においてバイデン氏の勝利が確実となった後も、「祝意」を伝える電話さえかけてきておらず、次期バイデン政権の出方を慎重に見極める構えだ。バイデン氏個人も、選挙戦を通じ、ロシアに対し厳しい姿勢をとってきており、楽観は許されない。

 その一方で、バイデン氏にとっては来年1月20日就任式直後には、新START失効が迫っているだけに、待ったなしの状況に追い込まれている。


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