地銀再編4つのパターン
今後、起こるであろう地銀の再編について野崎さんは4つのパターンを指摘する。
①リージョナルメガバンク
②トランスリージョナルメガバンク
③プラットホーム型
④発展的ガラパゴス型
「リージョナルメガバンクは、隣り合う地域での再編です。アメリカでも1990年代以降、1万件以上の地銀再編が起きましたが、これが最も成功しているパターンです。地域のプライスリーダーになることで過当競争を止めることができることに加えて、共通業務を統合することによる合理化を行うことができます。トランスリージョナルメガバングは、リージョナルに比べると効果は落ちますが、やはり重複業務の合理化を進めることはできます」
実際、隣接、遠方を含めて、地銀のグループ化は進んでいる。千葉銀行と中国銀行(岡山)などが参加する「TSUBASAアライアンス」のように、システムの共同開発を源流としながらも多様な事業の協力体制を築くことで投資コストなどの削減を進めるといった動きもある。隣県同士となると、それまでの利害関係が邪魔して、一緒に仕事をするということが難しい場合もあるため、地域を越えた形での連携のほうが進みやすいという場合もある。
プラットホーム型というのは、SBIホールディングスのような新しいプレーヤーの元に、地銀が参加することでこれまでとは違うサービスを提供する金融グループを目指すというものだ。このあたり、GAFAのようなプラットホーム企業が軸として参加するようなことがあれば、これまでとは違う新しい展開が期待できそうだ。
さて、最後のパターンが「発展的ガラパゴス型」という聞きなれないパターンだ。
「これは、地域金融機関の本質。何なのか? という答えをそれぞれの地銀が出すことです。例えば、地域の高齢者に、徹底的にスマートフォンの使い方を教えることでデジタルリテラシーを上げて、モバイルバンキングの利用を劇的に高めることで店舗負担を軽減して生き残るということ選択があってもよいと思います」
野崎さんが本書の中で事例としてあげる例で興味深いのが、イギリス・ロンドンにある「C・ホーア&カンパニー(ホーア銀行)」という非上場の銀行だ。「共感」「社会的責任」「誠実・正直」「質の高さ」という経営方針を掲げ、「利益より安定性」「顧客一人ひとりを細密に知ることができる範囲でしか顧客を増やさない」「質の最大化とリスクの極小化」「全ての社員が完璧に商品特性を理解する」といったスタイルを貫いている。
「全ての地銀がホーア銀行のようになるのは難しいですが、このような『リージョナル・プライベートバンク』として生き残るのも一つの選択肢としてあると思います」
日本の場合、銀行は銀行法によって株式会社と定められているが、特に地銀の場合は、株主と地域住民の利害が一致しないという問題が生じてしまう。例えば、支店の統廃合は合理化という意味で株主にはプラスだが、地域の利用者にとってはマイナスだ。
「資金吸収力、株主からの規律という意味で、銀行は株式会社と定められています。ただし、あえて上場会社以上に透明化したり、外部監査役を登用したりすることで、株式会社の機能を担保することはできます」と指摘するように、「株主<地域住民」がより実現しやすい形が認められてもよいかもしない。
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