2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年12月8日

身内にも恩赦

 来月退任するトランプ大統領は民主党からの「報復」を恐れて、身内に対しても恩赦を検討していると米メディアは報道しています。トランプ氏を応援する保守系のFOXニュースのショーン・ハニティー氏は、これから民主党による「魔女狩り」が始まるので、自分と家族にも恩赦を出すべきであると主張しました。家族には、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏、長女のイバンカ大統領補佐官、次男のエリック氏及び、娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が含まれています。

 ジュニア氏は、16年米大統領選挙の際中、ロシア政府と関係のある女性弁護士等とニューヨークで面会をしたために、米連邦捜査局(FBI)の捜査対象になりました。イバンカ氏は、一族が経営するトランプ・オーガニゼーションから同氏が共同所有するコンサルタント会社を通じて、「コンサルティング費」を受け取ったと報じられました。トランプ・オーガニゼーションには税金の支払いを回避するために、イバンカ氏にコンサルティング費を支払っていた疑惑があります。

 一方、トランプ・オーガニゼーションの経営幹部であるエリック氏は融資を得るために資産価値をつり上げたと言われています。エリック氏はニューヨーク州の検察官の捜査を受けました。クシュナー大統領上級顧問は、最高機密情報取扱権限の身元調査の際、当局に偽情報を提出しました。

 次女のティファニー氏は恩赦の対象に名前が挙がっていません。上の4人とは異なり、「灰色」ではないからでしょう。

 では、身内と自分への恩赦は可能なのでしょうか。ビル・クリントン元大統領は01年、義弟のロジャー・クリントン・ジュニア氏に恩赦を出した例があります。

 ただ、大統領が先を見越して自分に恩赦を出した前例はありません。しかも、トランプ大統領は自分に恩赦を与えた場合、罪を犯したと認めたことになります。

 トランプ氏は自己恩赦を巡って最高裁に持ち込まれても、保守派が6人、リベラル派が3人なので、勝利できると計算しているフシがあります。それが現実になれば、エイミー・バレット判事を急いで最高裁に押し込んだ価値が出てきます。

恩赦を出すのはペンス

 合衆国憲法修正第25条では、仮に大統領が空席となった場合、その権限は副大統領に帰属します。そこで、トランプ大統領は1月20日の大統領就任式までに辞任し、マイク・ペンス副大統領が大統領に就任して、恩赦を与えるシナリオを描くことができます。

 ただ、仮にそうなった場合、ペンス氏は自身の政治生命を賭けることになります。共和党員が立ち上げた反トランプの「リンカーン・プロジェクト」及び「隠れバイデン」の支持者は、トランプ大統領に恩赦を与えたペンス副大統領を強く非難するに違いありません。ペンス氏は自ら再選の可能性を下げ、フォード元大統領と同じ轍を踏むでしょう。

 従って、トランプ氏から恩赦を迫られた場合、ペンス氏がそれに応じるのか疑問があります。


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