2024年6月15日(土)

Washington Files

2020年12月14日

アメリカにTPP復帰を求めるしかない

 従って、中国のTPP加盟問題を議論する場合、「WTOの教訓」から学ぶべき点は決して少なくない。もし、中国加盟がもたらす中長期的影響を無視し、巨大中国市場への参入という目先の利益のみに目を奪われ既加盟国が短兵急な結論を下した場合、TPPもいずれWTOと同じ運命をたどることを覚悟しなければならないだろう。

 では、TPPが今後も、アジア最大の自由貿易協定として十分な機能を発揮していくために当面、とるべき措置は何か――それは、世界最大のGDPと最強の軍事力を誇るアメリカに対し、TPP復帰を熱心に働きかけること以外にない。アメリカが加盟することで、その存在感が高まり、仮に中国がいつの日か加盟が認められたとしても、WTOのような“悲劇”を回避する道を模索することはできる。

 この点、米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)が去る7日発表したリチャード・アーミテージ元国務副長官(共和)、ジョセフ・ナイ元国防次官補(民主)を座長とする超党派の有識者提言「アーミテージ・ナイ報告書」は注目に値する。

 同レポートは、日米同盟強化のシンボルでもあったTTPからトランプ政権が離脱した問題に言及、次のように指摘した:

 「日米両国が経済および技術面での協力体制を進化させることは、日米同盟の根幹をなすものである。逆に、両国間の強靭な経済協力関係を抜きにした場合、インド太平洋におけるいかなる戦略も空疎なものとなり、維持できなくなる。従ってまず、アメリカは日本と一緒になって経済的ルール作りのためにTPPに加盟すべきである。再加入のための(国内的な)政治的困難が存在することは確かだが、離脱がアメリカの繁栄と安全保障にもたらすリスクの方がはるかに大きなものであるがゆえに、加盟は待ったなしというべきである。

 この点、アメリカをメンバーに含まないアジア太平洋の広域をカバーするRCEPが11月15日に締結されたことは、ワシントンに対する『目覚ましwake-up call』と受け止めるべきだ。(バイデン)新政権は再加盟検討に際し、現状のままのTPPに不満を抱き、いくつかの協定内容の修正を求めてくることが予想されるが、この点は既加盟国との今後の交渉で解決可能だ。それよりまず、米政府は再加盟の意思を示し、協議の場での椅子を確保すべきである」

 菅首相は、来年1月20日バイデン政権発足後、早期にワシントンを訪問し、日米首脳会談に臨むとみられるが、その際真っ先に、アメリカのTPP再加盟を説得することが重要だ。再加盟は急がなければならない。中国が加盟を果たしてからでは手遅れだ。

 日米関係は過去4年間、安倍首相とトランプ大統領との個人的信頼関係が築かれたことによって、表面的には良好に推移してきたかに見えた。しかし今、後継者の菅首相は、安倍氏の盟友だったトランプ大統領が残した厄介な「負の遺産」処理のために頭を痛めざるを得なくなっている。

 皮肉と言えば皮肉だ。しかし、トランプ大統領がかく乱したアジア太平洋における同盟・友好関係の再構築と、中国の将来を見据えた自由主義圏の結束を図るためには、避けて通れない課題と言えよう。

  
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