街のDX(デジタル・トランスフォーメーションを進めるロサンゼルス)
街のDXを進める取り組みとして注目しているのがロサンゼルスだ。ロサンゼルス市では2017年頃から電動キックボードのシェアリングサービスが市内で提供されるようになったのだが、無造作に歩道に放置されているキックボードや事故につながりかねない危険な走行を行うユーザーなどの問題に頭を悩ませるようになったという。その一方、公共交通機関のネットワークが十分ではなく、クルマ移動が中心となっているロサンゼルスにとって、電動キックボードは安全性、環境負荷、利便性の観点から歓迎すべきというのが市の交通当局が至った結論だったという。
そこでロサンゼルス市交通局(LADOT)では、電動キックボードのシェアリングサービスを提供する事業者に対して、サービス導入の許可を与える代わりに全ての電動キックボードの位置情報・車両情報をLADOTに対してリアルタイムに提供することを義務付けた。その仕組みを解説しているのが次の動画だ。
動画の中でも紹介されているように、市内を走行する全ての車両情報や位置情報を当局がリアルタイムに把握することができれば、道路の使用規制や交通管理などをよりきめ細かる行えるようになる。LADOTではこの仕組みをライドシェア車両、自動運転タクシーなどにも広げていきたい考えだ。
リアルタイムに車両を把握するためには、事業者からデータを提供してもらう必要があるが、そのデータはMDS(Mobility Data Specification)という規格に準拠している。全米の主要都市やフォードなどのモビリティ関連企業が参画するOpen Mobility Foundationという団体によって策定された規格だ。
大都市の交通局が連携し、市内を走行する車両情報のデジタル化とリアルタイム把握が可能となるようデジタル・トランスフォーメーションを積極的に進めているのだ。
歩行者に優しい街づくりを進めるために市内の道路のデザインを大きく変えようとしている街もある。ニューヨークやベルギーのブリュッセルなどだ。ニューヨークではブルームバーグ前市長の時代に街中に憩いの広場を増やしていくPlaza Programというプロジェクトを開始した。
象徴的なのが年末のカウントダウンでも有名なタイムズスクウェアに作られた広場だ。ブロードウェイ側の車道を完全に封鎖し、歩行者の優先の広場に変える大工事が行われた。工事を進める際には、タクシーの移動情報をビッグデータとして収集し、一時的に車道を封鎖した場合でも交通流に悪影響がないことを確認する検証が行われたという。ビッグデータというデジタルと、広場を作るというリアルを組み合わせたところが先進的といえる。
車道を歩道や広場に転換する取り組みはベルギーのブリュッセルでも行われている。写真は2019年3月に訪問した時の写真だが、東京の中央通り、大阪の御堂筋のような目抜き通りの車道を完全に封鎖し、歩道と広場に転換する大工事が行われていた。ブリュッセル市のホームページによると、道路交通による大気汚染や騒音を減らし、環境に優しく市民の憩いの場を生み出すことを目的として28ヘクタールだった歩道・広場を50ヘクタールにまで拡大したという。