コロナ対策としても街をつくり変える試みが行われている
カーボンニュートラルの実現、交通のデジタル化(DX)を目的として行われている海外の斬新な取組を紹介したが、新型コロナウィルス対策でも興味深い取り組みが行われている。
先ほどご紹介したブリュッセルではコロナ対策として5月11日から期間限定で市内中心部の車道を歩行者と自転車に開放する取り組みが行われている。事故防止のために自動車は時速20km以下で走行することが義務付けられ、歩行者と自動車が車道を共有する“歩車共存”ゾーンとなっている。東京都内に当てはめると大手町から築地までのエリアになることから相当広いエリアだ。当初は3か月で終了する予定だったが、9月1日より一部運用を見直したうえで来年2月末までは継続されることになっている。
ソーシャルディスタンスを確保するため地下鉄やバスなどの公共交通機関の乗車定員を限定していることから、徒歩や自転車などによる移動に切り替えてもらうことが措置の目的ではあるが、コロナ対策を契機に道路の新しい使い方を試行する取り組みであるともいえる。
コロナ対策を契機として交通システムのリ・デザインを試行する取り組みはサンフランシスコ市でも行われている。ソーシャルディスタンスの確保と歩行者や自転車が移動しやすい空間を増やすために、交差点から道路への侵入口に看板を設置することで自動車が速度を落とさなければ通過できない“Slow Street”を多くの道路で導入し、それらをネットワークとしてつなぎ合わせることで市内を徒歩、自転車、電動キックボードなどでくまなく移動できる仕組みを導入しようとしている。
このようなSlow Streetは全米の多くの大都市で導入されており、それ以外にも臨時の自転車レーンの設置、青空レストランとして食事スペースを作るため歩道や車道の一部を封鎖する措置、テイクアウト商品を受け取りやすくするための臨時駐車スペースの設置などが行われている。これらの事例は全米主要都市の交通担当者が集まるNACTOというコンソーシアムのホームページにまとめられている。日本語版のガイドも作成されているため参考にしていただきたい。
https://globaldesigningcities.org/covid-19-resources-center/#japanese