2022年11月28日(月)

Wedge REPORT

2020年12月28日

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最先端のニューノーマル

 だが朝倉には「アンチ」が多いことも、また事実だ。特にネットユーザーや一部のコアな格闘技ファンは朝倉の言動を歓迎していないように見受けられる。その大きな要因はYouTuberとして大成功を収めているところが多分に関係していると言えるだろう。自身の公式YouTube「朝倉未来 Mikuru Asakura」のチャンネル登録者数は163万人、総再生回数も5億3000万回を突破し、猛烈に稼ぎまくっている。

 「アンチ」の人たちからすれば、朝倉に〝副業〟で成功者になっていることへの妬みと「格闘技を片手間でやっているんじゃないか」「YouTuberでインフルエンサーを気取っている」などという思いが根底にあるようだ。朝倉が斎藤に敗れた直後、ネット上でも「アンチ」と思われる人たちが、まるで鬼の首を取ったようにほぼ同じ内容のコメントを書き込んでいたことからも、それは明らかだろう。

 だが「アンチ」が多かろうが、朝倉のやり方は何も間違っていない。むしろ、これこそが現代において最先端のニューノーマルとなり得る手法と考えられる。プロの世界は強さに加え、ショーマンシップ的な要素も必要不可欠だ。客を集められなければ、いくら強くても興行は成り立たない。だからこそ朝倉は試合前、相手にトラッシュトークを仕掛けたり、ビッグマウスも連発したりする。この発言によって前出の「アンチ」の人たちに「ふざけたことを言いやがって」と思わせたり、ファン以外の一般層にも「何か危険なムードを漂わせる選手だな」と興味を引いてもらえたりすれば、その時点でもう朝倉はプロ選手として「成功」だ。

 朝倉の事実上の恩師でもある総合格闘技の第一人者・前田日明氏に言わせれば「試合前に『はい、頑張ります』としか言えないような選手はプロじゃない」。これは、まさしくその通りだと思う。YouTuberとしてフォロワーを増やしながらMMA(総合格闘技)の〝市民権獲得〟にも間接的に尽力し、試合前の挑発や過激な言動でも注目を集める「朝倉式PR」は時代に見合った手法であり、RIZINが〝朝倉頼み〟にならざるを得ない流れの根幹ともなっている。

 残念ながらRIZINが米国を拠点とする世界最大の総合格闘技大会「UFC」のようにスポーツライクなスタンスを徹底させ、本格的なルール整備によって競技化を図っても今の日本の土壌では受け入れられそうもなく、興行としてはおそらく成り立たない。コアな格闘技ファンの中には前出の朝倉の突飛な言動や異端児まがいの姿勢だけでなく、次の「RIZIN 26」にYouTuber兼プロレスラー、総合格闘家の〝ユーティリティー〟シバターの参戦が急遽決定した件などRIZINのサプライズ的演出に対して強いアレルギーを覚えている人もきっと多いだろう。

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