Wedge REPORT

2020年12月14日

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 そこまで悲観するような出来事ではない。横浜DeNAベイスターズは投打のダブル流出にも動揺することなく冷静に受け止めているようだ。

(Cristalov)

 国内FA権を行使した梶谷隆幸外野手と井納翔一投手のベイスターズ退団が発表され、巨人への移籍が決まった。週明けの14日にも井納のジャイアンツ入団が正式発表された後に巨人・原辰徳監督の同席のもと、2人揃っての入団会見も行われる見込みだ。

 梶谷は今季不動の1番打者として14年目で自己最高となるリーグ2位の打率3割2分3厘をマークし、19本塁打も放つ大活躍を見せた。井納もシーズン途中でケガ人が続出した先発ローテを助け、今季6勝を飾るなど在籍8年間で時に中継ぎもこなしながら50勝を残している。

 長らくベイスターズを支え続けてきた生え抜きの梶谷と井納の退団は一見すると大きな戦力ダウンにつながり、来季の三浦大輔新監督率いるチームの行く末は暗雲が垂れ込めるのではないかと想像されるかもしれない。少なくとも巨人の関係者はそう考えながら、ほくそ笑んでいるだろう。近年において巨人は「セ・リーグ球団から主力を引き抜き、相手の戦力ダウンを狙う」ことをストーブリーグのセオリーととらえているからだ。しかしながら、こうした見解を筆者が直接聞いた球界関係者の多くは「大きな勘違い」と断じている。

 実際にベイスターズの球団関係者もサバサバした表情で、こう本音を漏らしている。

 「梶谷と井納の退団は十分に予想できていたことです。球団は2人にFA権を行使しての残留を容認していましたが、もうその時点で半ば移籍は覚悟の上でした。ベイスターズの功労者である彼らの移籍は確かに残念で寂しいと思いますが、正直に言ってチームが計り知れないダメージを負うとは誰も考えていません。もともと退団も想定していたので、その流れに沿って来季のチーム編成に着手していくということです」

 他球団のマネーゲームに徹する必要はなく、去る者は追わない。巨人とは対照的に近年、ベイスターズのオフの考え方はこのように一貫している。日米球団の間で激しい争奪戦が展開されようとしていたネフタリ・ソト内野手もどちらかと言えば提示額より、最後は〝ベイスターズ愛〟が決め手となって残留の道を選んだともっぱらだ。

 梶谷は来年33歳、井納も来年35歳。前出の関係者が「ベテラン2人はチームを〝卒業〟したと考えています」とも述べていた言葉は決して単なる強がりには聞こえなかった。逆に投打で1枠ずつ空いたことは、若手たちにとって入り込むチャンスが到来したと考えるべきだろう。ソトと同じようにベイスターズのために戦う覚悟ができている若い力は現状豊富だ。

 その「ポスト梶谷」を狙える筆頭は、やはり来年で27歳を迎える神里和毅外野手であろう。プロ3年目の今季は開幕前からケガと打撃フォームの迷いが重なって調子が上がらず二軍スタートとなり、本来ならば確保できると目されていた「1番・中堅」の定位置をベテランの梶谷に奪われた。チーム周辺には「今季の梶谷は国内FA権取得のタイミングだったからこそ自身のアピールチャンスととらえて猛奮起し、自己最高の打率も残せたところも多分にある。何より開幕から神里の脱落でレギュラー奪取の好機が舞い込んだことも梶谷にとっては結果的に追い風になった」との見方もある。梶谷の〝確変〟と自身の出遅れがなければ、もともと神里はベイのリードオフマンを担うべき存在であったのだ。

 それでも神里は7月5日に一軍昇格を果たすと途中で首を負傷して長期離脱したタイラー・オースティン外野手の穴も埋める形で80試合出場、打率3割8厘、出塁率も3割7厘といずれもハイアベレージを記録した上に3本塁打17打点、7盗塁の今季成績を残している。規定打席にこそ届かなかったが、少ない試合数の中では申し分ない数字と言えるだろう。

 梶谷退団でも走攻守の三拍子揃った神里が順調に台頭すれば、十二分に穴は埋まる。50メートル5秒8の驚異的なタイムを記録した脚力はかなりの武器になるはずで、しかも何より若い。

 そして、今季も含めここ2シーズンは控えに甘んじている27歳・桑原将志の存在も忘れてはいけない。そもそも主に2018年シーズンまで紆余曲折ありながらも「1番・中堅」は桑原が手中におさめていたポジション。梶谷の退団を千載一遇のチャンスととらえ、定位置奪回に猛奮起してくることは容易に想像がつく。

 当然、身体能力の高さには定評が高く〝未完の大器〟と呼ばれ続けて久しい、26歳の乙坂智も黙ってはいまい。他にも現状で左翼・佐野恵太、右翼タイラー・オースティンでほぼ確定している来季メンバー以外の控え外野手なら大砲候補の22歳・細川成也、外野へコンバートされて3年目を迎える24歳・宮本秀明、選球眼と出塁率の高さが高く評価されている25歳・楠本泰史と予備軍は数多くいる。

 昨オフに〝ハマの大砲〟としてチームを支えた筒香嘉智がタンパベイ・レイズへ移籍。どうなることかと不安視されたが、そのスポットを26歳の佐野恵太が筒香に代わって新主将を任され、左翼の定位置とクリーンアップに定着し、期待以上の大ブレイクを遂げた。この流れは来季以降も球団の〝専売特許〟となる可能性を秘めている。ベイスターズは若手の競争意識が高く、戦力流出に追い込まれてもマイナス要素を穴埋めできるだけの土壌が出来上がりつつあるからだ。昨年7月に横須賀市内に完成したファーム施設「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」は12球団の中でもかなり恵まれた設備と環境が整っており、その礎となっていると球界内では評判となっている。

 そして井納の退団についても球団内は慌てている様子がまったく感じられない。「今季二軍監督を務めていた三浦監督がファームで直々に見ていた人材に白羽の矢を立て、起用していくことにもなるでしょう。現役時代にエースだった眼力も投手陣再建に大きな力となるのは間違いない。それに補足して言えば、井納は上茶谷(大河)が右ひじの炎症で開幕アウトにならなければ開幕ローテには入り込めなかった。そういう背景と照らし合わせれば、本来一軍の戦力にならないといけなかったメンバーが来季こそ出てこないといけない。その辺りの候補者たちに関しては次の春季キャンプの強化指定選手として三浦監督も確実に目星をつけています」(前出の関係者)

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