2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2020年12月7日

 果たして来季はどのユニホームに袖を通しているのだろうか。巨人のエース・菅野智之投手の去就が見えてこない。メジャーリーグ(MLB)移籍を視野に入れ、球団側にポスティングシステム(入札制度)の申請手続きを申し入れた。球団側も容認する方針を示していることから、このまま日本を代表する右腕が海を渡る可能性は今のところ高いと言える。ところが、当の菅野本人の意思が固まっていない。報道によれば、巨人残留も選択肢に加えているという。

(littleny/gettyimages)

 新型コロナウイルスの感染拡大によってMLBの各球団は経営的に大打撃を受けており、戦力補強の面においても深刻な資金不足が懸念されている。今オフは菅野獲得に大金をつぎ込めるほど体力のある球団が少ないうえ、入札があっても例年以上に低い条件しか舞い込んで来ないのではないだろうか。そして菅野自身も結局はMLBの球団から満足のいく条件を得られず、巨人残留を選ぶことになるのではないか――。このように大胆な予想を並べるメディアも複数ある。

 菅野がいくら日本でセ・リーグを舞台に「無双」と呼ばれるほどの活躍を残しているとはいえ、MLBでの実績は当然ながら全くない。その未知数の投手に赤字経営を強いられながらも先行投資する価値を見出すことは球団オーナー、そしてGMら編成担当の責任者たちはそれなりのリスクも覚悟しなければいけないだろう。

 しかも菅野を2018年オフから適用されている現行のポスティングシステムで獲得するためには、年俸総額と出来高によって異なるものの上限2000万ドル(約20億8000万円)と定められている譲渡金も余計に用意しなければならない。来年32歳を迎える菅野に長期の大型契約はまず見込めないことを考えれば「上限」には程遠いにせよ、少なく見積もっても500万ドル(約5億2000万円)以上の譲渡金が必要になってくるのではないかと考えられる。このコロナ禍において、これはかなりの〝チャレンジ〟だ。まさかの「入札ゼロ」を危惧する声もあるが、それもあながち的外れではない。

 ただ、そういった懸念はあるにしても何だかんだと言われながら杞憂に終わるとみている。菅野は滞りなく今月12日の締め切りまでにポスティングシステムの申請手続きを済ませさえすれば、MLB球団から複数の入札を得られるはずだ。2017年3月21日、ロサンゼルスのドジャースタジアムで菅野は第4回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)準決勝の先発マウンドに立ち、同大会優勝を果たした米国代表を相手に6回81球、3安打1失点と好投。

 敗れはしたが、MLBオールスターメンバーを擁する米国代表を相手にポテンシャルを発揮するとともに抜群の適応能力を示し、敵軍を率いたメジャー屈指の名将ジム・リーランド監督から「まさにリーグを代表する投手。彼は本当に良いピッチングをしていて、非常に良い印象を抱いた」と絶賛された。MLB公式ホームページでも菅野の特集が組まれると、ここから米国内で「SUGANO」の名前が一気に広まるようになって定着。菅野本人も将来的なメジャー移籍願望を公の場で打ち明け、MLB各球団の極東スカウトたちは獲得Xデーに備えて入念なスカウティングを繰り返してきた。そのうちの1人で日本を拠点とするア・リーグ某球団極東スカウトは「菅野の評価は今でもメジャーリーグのカテゴリーに組み込み、リサーチした中においてトップクラス」と断言し、こう続ける。

 「前回のWBCが開催された2017年から4年連続で10勝以上をマークし、そして今季を含め3度もセントラルリーグで最多勝のタイトルを手にしている。さらに今季は最優秀防御率のタイトルを手中に収め、開幕から13連勝という前人未到のプロ野球新記録も作った。今季から投球フォームにマイナーチェンジを施したのも当然、来季からのMLB移籍を意識した〝トライ〟だったと考えられる。成績は言うまでもなく、投球スタイルに加え、スピリットの面でも幅の広がりが見える点は評価すべきストロングポイントだ」

 確かにコロナショックが大きなマイナス材料になることは否めない。しかしながら前出のスカウトは「菅野に関しては長年に渡って調査を進めてきた背景もあり、単純に〝イッツ・オーバー(終了)〟ということにはならない。資金力がない球団は手を引くところが出てくるだろうが、裏を返せば本当に彼を必要として正当な評価を下す球団だけが(獲得の)レースに加わることになるだろう。

 つまり菅野にとっては選択しやすい環境が整うことになるはずだ」とも続けた。米放送局CBSスポーツが菅野に提示される契約予想額について「3年総額3000万ドル(約31億3000万円)が最低ライン」と報じたのも、妥当な数字と言えそうだ。さらに他の米主要メディアの間からは獲得に名乗りを上げそうな候補先としてニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックス、サンディエゴ・パドレス、トロント・ブルージェイズなどといった具体的な球団名も飛び交い始めている。個人的に耳にした情報としてはテキサス・レンジャーズ、ニューヨーク・メッツも参戦しそうな気配がありそうだ。


新着記事

»もっと見る