残留を手放しで喜べない?
展開次第では争奪戦となりそうな流れであっても菅野が未だ慎重になっている姿勢は、これまでMLB移籍を切望していたことを考えれば不可解だ。だが悩む要素となっているのは金銭云々の条件面ではなく、やはり「コロナ」だろう。今季大幅な試合数削減となったMLBは来季開幕できるかどうかも不透明。日本以上どころか世界最悪レベルでコロナ第3波のハレーションが深刻となっている米国の状況は間違いなく北米4大プロスポーツ全体、ひいてはMLBにも暗い影を落としている。新天地移籍が決まっても肝心のMLBが開幕できないとなれば、意味を成さない。ましてや慣れない異国の地での新生活にもさらに「コロナ」で不自由を来すことになるのだから、菅野が不安を覚えるのも致し方ないと考える。
諸々の事情を勘案して菅野が夢舞台への移籍を断念し、残留の道を選べば巨人側は手放しで万々歳に違いない――。と言いたいところだが、実は必ずしもそうではないようだ。「もし菅野が今オフ、メジャー移籍を見送って1年先送りにするとなると海外FA権取得後となり、球団にはビタ1文も入らないことになってしまう。そのシナリオは球団としても避けたいでしょうし、当然ながら菅野だって今年メジャー移籍を断念するなら巨人に骨を埋める覚悟も固めなければいけないことは十分に分かっているはずです。
そうなると巨人側は菅野のような功労者がメジャー封印で残留となれば、それなりの誠意を見せなければいけない。今季の年俸6億5000万円(推定額=現時点で日本球界最高年俸)よりも大幅アップは当然のこととして、さらに最低4年以上の複数年契約も用意しなければいけないでしょう。資金力があると言っても、他球団同様に巨人だってコロナ禍で少なからず打撃を受けている。決して無尽蔵のお金があるわけではない。
菅野の残留は嬉しい半面、同時に莫大な出費も計上することになるので球団の中からは『できれば〝卒業〟してメジャーリーグに行って欲しい』という複雑な本音を耳打ちする関係者も少なくないのです。菅野の存在は絶対なのは言うまでもないですが、彼に頼らず新陳代謝を行って若い芽を育んでいく流れも必要。菅野が〝卒業〟して世界に羽ばたいていけば、巨人のネームバリューも広がる。金銭的にも巨人は大きなプラス材料を生み出すことになるわけですから」(巨人OB)
菅野の去就と決断には数多くの日米球界関係者が固唾を飲みながら凝視している。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。