米、ニミッツの撤収を撤回
バイデン政権への思惑は別にして、イラン側のウラン濃縮度を高めるという戦略は軍事的な緊張をエスカレートさせるリスクをはらんでいる。ミラー米国防長官代行は1日、ペルシャ湾に配備していた空母ニミッツの撤収を発表したばかりだったが、3日になって突然、撤収命令を撤回した。イラン側からトランプ大統領らへの「脅威が高まっているため」とその理由を説明した。
イランの濃縮度引き上げ着手に合わせて、ニミッツの残留を決めたのかどうかは不明だ。またトランプ大統領が一連の動きにどの程度関与しているのかも分かっていないが、政権の任期切れが2週間後に迫る中で、国防総省とホワイトハウスの意思決定の混乱ぶりがあらためて露呈されたのは間違いない。まかり間違えば戦争にもなりかねない状況の中で、米政府内で対イラン戦略が大きくブレたことには危うさを禁じ得ない。
米国以上にイランの動向に神経をとがらすイスラエルのネタニヤフ首相はイランの濃縮度を高める決定に対し「軍事的な核開発を前進させる目的であることは確実だ」と断じ、「核兵器製造は容認しない」と敵意をむき出しにした。ネタニヤフ首相はこれまで、イランの核施設を軍事力で破壊することをトランプ大統領に説得してきたが、大統領の退任間際までその働きかけを強めるだろう。
こうした中、イラン革命防衛隊が4日ペルシャ湾で、韓国のタンカーを拿捕した。タンカーはサウジでエタノールを積んで航行中だったが、「環境を汚染した」容疑で調べを受けているという。韓国は近海で海賊取り締まりに当たっていた駆逐艦をペルシャ湾に向かわせていると報じられているが、同湾の軍事的な緊張の高まりが実証された格好だ。
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