民主党の混乱
弾劾には一貫して距離を置いてきたバイデン大統領は声明で、マコネル氏の発言を引用しながら、「有罪にこそならなかったが、罪の内容に議論の余地がない」と断じた。同紙によると、バイデン政権が最も望んでいたのは「迅速で断固たる弾劾の終了」。大統領は早期に弾劾裁判を終わらせ、約2兆ドルに上るコロナ追加支援策などの優先課題に取り組みたいというのが本音だった。
何よりもバイデン氏は「分断された国民の結束」を掲げており、裁判が長期化するようなことになれば、分断が逆に深まりかねないことを懸念していたと見られる。同紙はクレイン首席補佐官らホワイトハウスの当局者が議会民主党に対し、1週間結審が延びれば、コロナ支援策の実現が危うくなってしまうとの危機感を伝えていたという。
こうしたホワイトハウスの意向もあってか、証人喚問をめぐる結審直前の民主党のドタバタ劇は混乱の極みだった。検察官役を務める下院のラスキン氏ら議員団はトランプ氏の有罪を明確にするため、ペンス前副大統領やマッカーシー共和党下院院内総務らの証人喚問を強く提案した。トランプ氏の弁護団や共和党が反対する中で、喚問の是非を問う採決が行われ、いったんは54対46で可決した。
この時点では、証人の第一弾として、共和党のボイトラー下院議員を呼ぶことが決められていた。同議員はトランプ前大統領がマッカーシー院内総務から議会襲撃を止めるよう要請された際に、応じなかった事実を“告発”した人物だ。だが、証人喚問が可決された直後から、民主党内部で喚問への反対論が噴出、結局2時間後に喚問は取りやめとなった。
ラスキン氏らは喚問中止の代わりに、トランプ氏が襲撃を止めなかったといいう同議員の声明を読み上げ、これが証拠として採用された。だが、民主党内の一部に強い不満が残った。この突然の変更の背景には裁判が長期化することを懸念したホワイトハウスの圧力があったとの見方が有力だ。同紙はバイデン大統領に近いクーンズ上院議員(デラウエア州選出)がラスキン氏と直接会い、喚問の中止を要請したと報じている。
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