2024年12月23日(月)

WEDGE REPORT

2021年1月12日

 米下院民主党は11日、トランプ大統領が連邦議会議事堂襲撃の「反乱を扇動した」として、罷免を要求する弾劾決議案を提出した。同案は13日に審議される。弾劾裁判が行われる上院での罷免には3分の2の賛成が必要。共和党のマコネル院内総務が弾劾に前向きな発言をするなど共和党議員十数人が賛同するとの見方も浮上しており、弾劾が可決する可能性が出てきた。民主党は弾劾判決に続いてトランプ氏の「将来の公職追放」決議の可決を狙っている。

(zimmytws/gettyimages)

2回の弾劾受ける史上初の大統領

 民主党のペロシ下院議長は「大統領の脅威は切迫したものであり、われわれも速やかに行動しなければならない」と述べ、トランプ氏解任の追及を断固続ける考えを強調した。議長ら民主党指導部の「トランプ解任戦略」は2段構え。憲法修正25条による「職務不能」の解任と、弾劾による罷免だ。

 前者については、下院民主党は11日、副大統領と閣僚の過半数の賛成でトランプ氏を職務不能とし、ペンス副大統領を大統領代行にする25条の適用を求める決議案を既に提出した。12日に可決される見通しだが、ペンス氏はこの適用に反対していると伝えられており、決議案通りに事態が動く可能性は低いようだ。ペロシ議長はペンス氏が動かなければ、弾劾決議の手続きを推進するとしている。

 弾劾決議案によると、トランプ大統領は支持者らによる議事堂襲撃前の演説で、選挙に勝ったと虚偽の主張をし、「死ぬ気で戦わなければ、国を失う」などと扇動して襲撃を促したと指摘。「重罪と不品行により弾劾される」と指弾した。その上で、トランプ氏が職務にとどまれば、民主主義や憲法、国の安全保障にとって脅威となると大統領を厳しく非難している。

 民主党が多数派の下院で、弾劾決議が可決されるのは確実視されており、トランプ氏は弾劾を2回受ける史上初めての大統領となる。問題は20日までのトランプ氏の任期が1週間余りしか残っていないことだ。民主党の有力議員の1人は新閣僚の承認などバイデン政権の始動に支障が出ないよう、上院での弾劾審議を遅らせるべきだと主張しており、下院で可決された弾劾決議を直ちに上院に送るかどうかをめぐって民主党内でなお意見の対立がある。

24年の大統領選出馬を阻止

 共和党のマコネル院内総務は上院の弾劾審議は早くても任期切れ前日の19日になるとしており、日程的には、上院の弾劾裁判は事実上、トランプ氏の退任後に行われる可能性が強い。憲法上、退任後の大統領を裁くことには問題はないとする見方が一般的だが、「最終的には連邦最高裁判所の判断によることになる」(ニューヨーク・タイムズ)。

 時期は別として、上院で弾劾裁判が行われた場合、弾劾には上院(100人)の3分の2の賛成が必要だ。上院の新しい議席数は民主50、共和50と分かれているが、拮抗した場合は副大統領(ハリス氏)が投票することができるため、民主党が多数派だ。弾劾には共和党側から17人の賛成が必要になる。当初、こうした大規模な造反は不可能と見られていたが、十数人が賛成に回るとの見方が浮上、微妙な情勢になりつつある。

 民主党は、なんとか弾劾を可決した後、憲法で認められている「公職不適格」決議の投票に持ち込んで、トランプ氏を永久に公職から追放することを狙っているのではないかと見られている。この投票は「過半数の賛成」で可決されると定められており、民主党にとってはハードルが低い。トランプ氏は24年の次期大統領選を目指して政治活動を続ける見通しだが、民主党にはこれによって同氏の大統領選出馬を阻止する思惑があるのではないか。


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