生中継に夢中になり、暴徒鎮圧が二の次に
トランプ大統領は議会襲撃事件後の翌日の7日に襲撃を批判する動画を出して以来、公の場には姿を見せていない。最大の武器だったツイッターが大統領の投稿を永久停止し、乗り換えようとした右派のSNSアプリ「パーラー」も使えなくなった。
これまでのような発信ができなくなった大統領が最後の日々をどう過ごしているのか注目の的だが、ワシントン・ポストは12日、「マヒした6時間」という見出しで、議会襲撃が起きた際の、トランプ大統領とホワイトハウスの混乱ぶりを暴き出している。
同紙によると、大統領は襲撃のもようを映し出すテレビの生中継にくぎ付けとなり、助けを求める共和党議員らの電話にも出ず、暴徒鎮圧の対策を全く取ろうとしなかったという。同紙は「指導者として問題の解決に当たるのではなく、単なる見物人の姿だった」と厳しく批判している。
大統領は襲撃の直前、支持者らに「議会へ行進しよう。私も行く」と煽った後、ホワイトハウスに戻って、「バイデン氏勝利の議会の確定作業を停止しようとしない」議長役のペンス副大統領に怒りのツイート。「国と憲法を守るための勇気を持っていない」とこき下ろした。だが、同紙によると、その後の支持者らの議会襲撃には傍観者にとどまり、暴力を止める対策を取らなかったという。
同紙によると、大統領は共和党の下院院内総務のマッカーシー議員や大統領の友人のグラム上院議員らが大統領の娘婿のクシュナー上級顧問や娘のイバンカ氏を通して、大統領に暴徒鎮圧のメッセージを発表するよう懇願しても、テレビに夢中で動かなかった。大統領側近の1人は「襲撃の生放送を見ていたからだ」と述べている。
イバンカ氏らは襲撃から30分以上たってやっと大統領を説得。大統領は「議事堂の警官に従え、平和的な行動を」とツイートした。だが、「平和的な行動を」という呼び掛けを盛り込むことを大統領は望んでいなかったという。1時間後、側近らに説得された大統領は「われわれは法と秩序を重んじている。暴力の停止を」などというより強いメッセージを送った。
同紙によると、州兵動員で軍部と協議したのはペンス副大統領で、議事堂内の“秘密の場所”から軍部に指示した。トランプ大統領やホワイトハウスからはペンス氏の無事を確認するような連絡は一切なく、同氏の補佐官がホワイトハウスに無事であることを報告したという。
ペンス氏は20日のバイデン大統領の就任式に出席する意向で、欠席することを宣言したトランプ大統領とは決定的な溝ができている。ペンス氏が今回、危機的な状況の中で的確な対応を示したことで同氏の評価が上がる一方、トランプ氏は身内からの相次ぐ造反にも直面。11日にはウルフ国土安全保障長官代行が辞任した。大統領への抗議の辞任と見られている。議会襲撃事件後、トランプ政権の閣僚では3人目の辞任だ。
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