イラン大統領選挙を視野に攻防
米国との対話に向け、3か月間の猶予を与えた格好のイランだが、バイデン政権同様、ロウハニ政権も国内の保守強硬派から圧力を受けており、制裁解除の見返りが全くないまま米国の復帰を認めるわけにはいかないだろう。IMFの融資の承認だけでは保守強硬派は納得しない。米国の核合意会合出席を認めるための“大義名分”が必要だ。
両者の念頭にあるのは6月のイラン大統領選だ。今回は穏健派のロウハニ大統領の任期切れに伴う選挙となるが、米国との対話に失敗し、一部でも制裁解除が実現できなければ、保守強硬派の大統領が誕生する可能性が高い。昨年2月の議会選挙はイランの英雄ソレイマニ将軍が米国に暗殺された反発もあって保守強硬派が圧勝した。保守強硬派の大統領が生まれれば、反米色が強まって制裁解除は遠いてしまう。ロウハニ政権が恐れる事態だ。
バイデン政権にとっても強硬派大統領の誕生は悪夢でしかない。イランが核開発を進め、核武装するリスクが高まるからだ。イランが核武装すれば、適性国のイスラエルやサウジアラビアに対する脅威が増大、サウジなども核開発に走り、ペルシャ湾岸に核ドミノが起きかねない。こうしたことを避けるためには、最終的にイランの核施設を軍事攻撃する以外、選択肢がなくなってしまう。バイデン大統領にとっては絶対に回避したいシナリオだろう。
このように強硬派政権の誕生を阻止するという点ではロウハニ、バイデン両大統領の思惑は一致しており、両者の対話再開の可能性は小さくない。こうした中で、危険な臭いを醸し出しているのがイスラエルだ。ネタニヤフ首相は19日、「古い合意に戻ることはイランが核保有する道を開く」と米国の復帰に懸念を表明した。イスラエルはすでに、イランの核施設攻撃計画を策定したと伝えられており、展開次第では再び軍事的緊張が高まる恐れがある。
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