Wedge REPORT

2021年3月2日

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稲村 肇 (いなむら・はじめ)

東北大学名誉教授

宮城県国土利用計画審議会会長、東北港湾ビジョン策定委員会委員長、福島県港湾審議会会長、宮城県復興整備協議会委員、元土木学会副会長などを歴任。

 ③復興事業の遂行で時間を要したのが移転候補地の決定と用地買収だ。大規模津波災害が予測される自治体においては十分な面積を持つ移転候補地をあらかじめ選定しておくことが必要だ。東日本大震災においては有力な候補地の所有者や相続人が不明のケースが多数あり、あきらめることが多々あった。今後は候補地の所有者と意思を事前に把握することが重要だ。

 ④そもそも、個人の宅地や住宅を政府の責任で用意することは税金の使い方として問題がある。簡単ではないが、諸外国のように、民間の災害保険で個人の住まいを再建することを原則とすべきだ。大規模災害の保険料は高額になるため、自治体などで保険料の補助金を個人に対し給付する方法も良い(ニュージーランドに例がある)。また、災害保険に対する保険会社の再保険に対して国庫補助金を投入する制度も有力だ。

 最後に、筆者が現在、最も関心があるのは、防災集団移転した小規模な団地のコミュニティの継続性の問題である。震災後10年が経過し、地元に残った人たちの高齢化で、防災集団移転地でも空き家が増加しつつある。復興は住宅を建てて終わりではなく、そこが故郷として継続することこそが重要である。移転事業の遅れにより、心ならずも故郷を去った人たちに故郷の状況を伝え、できることならUターンしていただくための仕組みづくりに力を尽くしたいと考えている。

高台移転したうちの一つ小網倉浜団地。牡鹿半島の多くの集落で高齢化が進むなか、次の10年後の姿はどのようなものになっているのだろうか (MASATAKA NAMAZU)
Wedge3月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「想定外」の災害にも〝揺るがぬ〟国をつくるには
Contents     20XX年大災害 我々の備えは十分か?
Photo Report     岩手、宮城、福島 復興ロードから見た10年後の姿

Part 1    「真に必要な」インフラ整備と運用で次なる大災害に備えよ  
Part 2     大幅に遅れた高台移転事業 市町村には荷が重すぎた             
Part 3     行政依存やめ「あなた」が備える それが日本の防災の原点      
Part 4   過剰な予算を投じた復興 財政危機は「想定外」と言えるのか   
Part 5     その「起業支援」はうまくいかない 創業者を本気で育てよ          
Part 6   〝常態化〟した自衛隊の災害派遣 これで「有事」に対応できるか

  
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◆Wedge2021年3月号より

 

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