「ハクティビズム」――。耳慣れない言葉ではないだろうか。
しかし、今年6月に違法ダウンロード刑事罰化への抗議活動のため、財務省や自民党、日本音楽著作権協会などのウェブサイトをダウンさせたとされるアノニマス。イラク戦争の米軍機密文書やアメリカ外交公電をホームページ上で公開したウィキリークス。両者は、「ハクティビズム」という活動に含まれるというから私たちはすでにその現象を目にしているのだ。
ハッカーの歴史から、ハクティビズムとは何か、そしてウィキリークスやアノニマスまで新しい情報社会の行方を考察したのが『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)だ。今回、一橋大学大学院の塚越健司氏にハクティビズムとは、そしてその可能性についてお話を伺った。
――本書を読みハッカーの歴史からウィキリークスなどのハクティビズムに連なる流れがよくわかりました。塚越さんはもともとフランスの思想家・歴史家ミシェル・フーコーについて研究されていたということですが、どのようなキッカケでハクティビズムに興味を持ったのですか?
塚越健司氏(以下塚越氏):フーコー研究に関して日本では長い歴史があり、さまざまな側面から語られています。フーコーのなかでも私が興味を抱いていたのは権力論です。その権力論を実践的に捉えてみたいという意識がありました。
2010年にウィキリークスが公開したイラクの民間人殺傷動画を偶然目にしました。その映像に強い衝撃を受けた私はウィキリークスについて調べるようになり、今まで研究してきたフーコーの権力論とウィキリークスのような社会事象を接続して考えてみようと思いました。その後、ウィキリークスを研究するなかで、2008年頃からウィキリークスと協力関係にあったアノニマスにも注目するようになりました。
ウィキリークスのジュリアン・アサンジはもともと暗号理論のスペシャリストであり、ハッカーです。ウィキリークスやアノニマスの源流にはハッカーというものがあり、それらふたつを包括するハクティビズムという活動があります。今回はハクティビズムという言葉をキーワードに現在の情報化社会の政治運動を見てみようというのが本書のコンセプトです。