2022年10月6日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年9月27日

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 他方中国は、薄熙来事件が示しているように、改革路線と毛沢東の威光まで掲げてのポピュリズムの間で、利権もからんだ暗闘が存在しています。

 従って、米中関係は1960年代の米ソ程の、「軍縮・軍備管理交渉の潮時」とまでは言えませんが、筆者の言う衛星のゴミ等の規制についての行動規範程度であれば反対する理由もありません。

 但し、その際、米国には以下の点に留意することが望まれます。

 まず、ソ連でも外務省の力は限られていたが、それでも軍は一応政府の一部でした。しかし、中国の軍は共産党の私軍であるので、外交部の手におえる話ではなく、中国側の交渉窓口を整備してもらう必要があります。

 次に、米国が話を衛星ゴミの管理に限ろうとしても、中国側は米国が開発の構えを示しているあらゆる宇宙兵器(MD、通常火薬装備のICBM、金属棒を宇宙から地表に発射する「神の杖」、レーザー、電磁波等)に網をかけるばかりでなく、東アジアの米海軍の配備・行動にまで縛りをかけようとするでしょう。

 従って、衛星ゴミの管理に的を絞るのであっても、中国側が要求を膨らませてきた場合に備え、米側もバーゲニング・チップとしていくつかの付帯要求を用意しておくべきです。例えば、中国の核ミサイルについての情報提供が挙げられます。現在は、その数量についてさえ、確かな情報が存在していません。それは、日本の安全保障にもろに関わることです。

 そして、衛星ゴミの管理のような話は、米中だけではできません。日本、ロシア等、人工衛星あるいは人工衛星破壊用ミサイル打ち上げ能力を持つ国はすべて交渉に含まれるべきでしょう。むしろそのようにした方が、中国を交渉の場に引きずり出すことができると思われます。

 日本は、宇宙の軍事使用を規制する動きには軽々に支持するのではなく、是々非々で慎重に立場を定める必要があります。核弾頭装備の巡航ミサイル「トマホーク」が太平洋から完全に引き上げられてしまった現在、日本をめぐる「核抑止の梯子」の重要な環が欠落したままになっていますが、これを埋めるために宇宙は重要な意味を持っています。現行のMDはもちろんのこと、将来、レーザー、電磁波でミサイルを撃破できるようになる時に備え、日本はオープン・ハンドを維持しておくべきです。

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