2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月20日

 米ブルッキングス研究所のウェブサイト3月30日付で、同研究所のKenneth Lieberthalと北京大学国際関係学部長の王輯思が、米中関係が今のまま進んでいけば、やがて双方が極めて高い代価を払わざるを得なくなるとの危機意識の下に、最近の米中間の相互不信について米中双方の視点を紹介し、関係が危機的状況に陥らないために何をすべきかを論じています。

 すなわち、中国は、今日の米中の相互不信の原因は米国の政策・対応・誤解にある、中国は第一級の大国となり、中国の発展モデルは、途上国にとって西側民主主義や市場経済に代わる選択肢になっている、ところが、米国は衰退に向かいつつあるのに、覇権的地位を保持しようと、中国の台頭の阻止、転覆を狙っている、と見ている。

 他方、米国は、中国との間に長期的、建設的関係を築きたいと思っているが、中国の将来はあまりに不確実であり、また、一党独裁制や人民解放軍の強行姿勢など、懸念材料が多すぎる、それに中国が米国との関係をゼロサムと見ている以上、米国はそれに備える必要がある、さらに、中国による知的財産権の侵害、レアアースの扱い方、人民元の過小評価、サイバー攻撃の不透明さ、スパイ活動なども不当だと思っている。

 このような米中の主張の対立、戦略的不信の基本的な源は三つある。それは、(1)異なる政治的伝統・価値体系・文化、(2)相手側の政策決定過程や政府と他の団体との関係への不十分な理解と評価、(3)米中の力の差が縮小してきたという認識だ。この内、(1)は構造的かつ根深いものなので、大きな変化が起きることは期待できない。従って、米中にとり、互いに相手の国情をもっとよく理解し、両国が国際的試みに二国間、多国間協力することで、戦略的不信の第二、第三の源に取り組むのが現実的だ。

 ただ、おそらくは中国側の「百年の屈辱」の記憶と、パワーに関して中国は米国より不利な立場にあるという認識のために、戦略的不信はワシントンよりも北京で強いことは念頭に置くべきだ。

 具体的には、経済と貿易面では、米国は投資環境を整備して中国の対米投資を促し、技術輸出規制の見直しを行い、中国は政治システムをより透明なものにし、米国側が理解しやすいようにする。また投資協定の交渉も行う。 軍事面では、どのような軍備増強や通常の軍事作戦なら、中国は安全保障上の核心の利益を守ることができ、米国はアジア太平洋地域の友邦や同盟国へのコミットメントを果たせるか、軍も参加させて、首脳同士が踏み込んだ持続的対話を行う。


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