2022年12月9日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2021年3月10日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

Socialism will certainly triumph over capitalism.

■動詞

――過去形の一般例として、

 The October Revolution in 1917 brought Marxism-Leninism to China.(1917年の10月革命は中国にマルクス・レーニン主義をもたらした)

――動詞不定形では、

 To serve the people is our happiness.(人民に服務することは、我等の幸福である)

――未来形では、

 Imperialists will be imperialists:they will not change their aggressive nature.(帝国主義者はとどのつまり帝国主義者であり、彼らの侵略性が改まるわけがない)

■副詞

 Socialism will certainly triumph over capitalism.(社会主義は資本主義に必ず勝利する)

■willの用法。「willは決心、決意、意志を表す」として、

 China will never be a superpower.(中国は断固として大国にはならない)。因みに、これは毛沢東の発言である。

 革命的で激烈な例文は際限なく続くが、いささか辟易としてきたので、この辺で切り上げるが、教育内容もさることながら、やはり興味深いのは、同書出版の時期だろう。

 同書が出版された1973年はニクソン大統領の電撃的な訪中の翌年に当たる一方、毛沢東原理主義を掲げる四人組が影響力を強めていた頃だ。アメリカと手を組むのか。それとも文革路線を堅持するのか。政治路線を巡って極めて微妙の時期だったに違いない。

 はたして一石二鳥式教育で革命と英語を同時に学ばせようとしたのか。英語教育を奨励することでアメリカを徹底研究しようとしたのか。それとも中国人一般が持つアメリカへの素朴な憧憬、無条件に近いアメリカ好きを刺激し、英語をエサにでもしないと若者の革命離れを食い止められないとでもいった危機感から、苦肉の策として出版されたのか。いまとなっては不明だ。

 とはいえ「Only socialism can save China」との『簡明英語語法』の結語は、現在の中国に対し強硬姿勢を固める欧米諸国を前にした習近平政権の基本姿勢にピッタリだろう。

 『簡明英語語法』が出版された1973年に、1953年生まれの習近平国家主席はちょうど20歳を迎えていた。はたたして習近平青年は『簡明英語語法』を熱心に学んだのだろうか。

  
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