田部康喜のTV読本

2021年3月12日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Yutaka Higuchi/gettyimages)

 「俺の家の話」(TBS・毎週金曜よる10時)は、ドラマの展開が予想できない、ハイテンポな家族の物語である。人間国宝の能楽の観山寿三郎(西田敏行)を舞台にして、長男のプロレスラー・寿一(長瀬智也)が戻ってくる。寿三郎は脳梗塞のリハビリ中だが、痴ほう症が進行している。

 17歳のときに家出した寿一に代わって、観山流宗家を維持してきたのは、一番弟子の寿限無(じゅげむ・桐谷健太)だった。本来は宗家を継ぐはずだった、寿一(長瀬)とは幼馴染である。宗家の後継者は、寿一であるべきだと考えている寿限無によって、寿一は寿三郎の介護と、宗家を継ぐべく、修行を始めたのだった。

 「能」と「プロレス」、「介護」の3つのテーマをひとつの話にまとめる。寄席で、観客からまったく連関のない3つの題を噺家が聞いて、それを落ちまで落語にまとめるのを「三大噺(はなし)」という。脚本のクドカンこと、宮藤官九郎がこの手法でストーリーを紡いでいるように見える。寿三郎(西田)の一番弟子が、寿限無(桐谷)と呼ばれているのは、古典落語の題名に由来している。

 また、物語の作り手として、「妄想派」ではない。頭のなかの想像だけで執筆するタイプではないのである。「取材派」である。現地を取材するとともに、大量の資料を読み込む。

 「能」と「プロレス」、「介護」という別々のお題を貫いているのは、現代の家族の在り方である。宗家の寿三郎(西田)の死後について、遺産の取り分などをめぐって、すでに長女の進学塾の講師である、長田舞(江口のりこ)と、次男で弁護士の踊介(ようすけ・永山絢斗)の思惑がうごめいている。

 「三題噺」をクドカンが見事に展開しているは、観山家の人々をつなぐ脇役たちが個性豊かに描かれているところにある。

 訪問介護士の志田さくら(戸田恵梨香)は、高齢者の介護に訪れて、婚約して多額の遺産を引き継いだ過去を持つ。寿三郎(西田)も弟子たちを集めて、さくらをフィアンセとして紹介する。弁護士の次男・踊介(永山)は、さくらが「後妻業」であることを疑う。

 第7回(3月5日)に至って、寿一(長瀬)は重大な選択に迫られる。家族旅行から帰宅して、ぼーっとしていると、さくらが自分のスマーフォンをみせて、踊介(永山)とのSNSのやりとりの画面を示す。そこには、踊介が「旅行から帰ったら、プロポーズする」とあった。

寿一  それで、プロポーズはあったの?

さくら いえ。

寿一  すぐ「解散」って言って帰りましたもんね。

さくら ・・・・・・

寿一  どうしてだまっているの?

さくら それは、あなたの番だからです。

    あなたが答えないと、踊介さんにどう答えたらいいかわからいので。

関連記事

新着記事

»もっと見る