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田部康喜のTV読本

2021年3月12日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

視聴者がまさに観たい配役がそろう

 寿一とさくらの対決に先立ってひとつのドラマがあった。寿三郎が、寿一の息子の秀生(羽村仁成)に能の手ほどきをしたところ、筋がいいので、観山の籍に入れたいと言い出した。寿一は、秀生の親権を持っている、元妻のユカ(平岩紙)と弁護士を立てて協議に入った。

 話し合いのなかで、寿一とユカが離婚に至った理由が、寿一は家族を顧みずに米国修行に出かけたり、試合のために全国を回ったりしたことにあると述べた。ユカの答えは意表を突くものだった。

「家を顧みなかったのではなくて、2DKのマンションで『殺気』を放っているのが耐えられなかった。米国に行ったのが気に入らなかったのではなくて、帰ってきてしまったことよ」と。

 寿一はさくらにこう答えるのだった。

「俺は殺気を放っているし、大事なひとをもう二度と不幸にしたくない」

 プロポーズを受けるわけには、いかないというのである。

さくらは、寿一をみつめる。

「寿一さんがもっと好きになりました。あなたは大きすぎる。体だけではなくてその中身も。大阪城ホールのリングを客席から観るぐらいがいい、というのは間違いだと思う。わたしは、殺気も、近くにいても」

 クドカンの舞台やドラマ、映画に共通するのは、自分自身が最も登場して欲しい俳優に声をかけていることだろう。

 「あまちゃん」では、青春時代のアイドルの小泉今日子をヒロインの母親役に起用した。俳優として所属している「大人企画」のメンバーたちが脇を固めていた。高校の先生役の皆川猿時であり、駅の助役の荒川良々らである。

 舞台づくりの発想に近い。今回のドラマも、寿一(長瀬)の元妻役の平岩紙の演技がみせる。

 第7回もまた、「能」を三大噺に入れ込むことを忘れない。寿三郎(西田)が、所蔵の能面や装束がなくなっていることに気づく。寿一や寿限無は、痴ほう症のために、ガールズバーの女性たちにやってしまったと確信する。

 しかし、犯人は弟子見習いに入門した男で、所蔵物の管理が緩いのをにらんで盗み出していたのだった。

寿限無 「元カノにあげた写真もあったから。忘れたのかと思って」

寿三郎 「ばーか、そのインスタグラムに『いいね』を押しているんだよ」

 寿三郎が検査入院した結果、介護度は「自立」から「要介護2」まで悪化していることがわかった。

 「三大噺」は、見事な落ちが落語家の腕の見せ所だ。クドカンにも期待できる。

【修正履歴】

訂正して、お詫び申し上げます。

(誤)族旅行から帰宅して、ぼーっとしていると、さくらが自分のスマーフォンをみせて、寿三郎(西田)とのSNSのやりとりの画面を示す。そこには、寿三郎が「旅行から帰ったら、プロポーズする」とあった。

(正)族旅行から帰宅して、ぼーっとしていると、さくらが自分のスマーフォンをみせて、踊介(永山)とのSNSのやりとりの画面を示す。そこには、踊介が「旅行から帰ったら、プロポーズする」とあった。

(誤)寿一  わすれているんだ。

(正)寿一  すぐ「解散」って言って帰りましたもんね。

(誤)さくら それは、あなたの番だからです。

       あなたが答えないと、寿三郎さんにどう答えたらいいかわからいので。

(正)さくら それは、あなたの番だからです。

       あなたが答えないと、踊介さんにどう答えたらいいかわからいので。

(誤)寿一  「バーの女にあげた写真もあったから。忘れたのかと思って」

(正)寿限無 「元カノにあげた写真もあったから。忘れたのかと思って」

(誤)寿三郎が検査入院した結果、介護度は「自立」から「介護度2」まで悪化していることがわかった。

(正)寿三郎が検査入院した結果、介護度は「自立」から「要介護2」まで悪化していることがわかった。

  
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