視聴者がまさに観たい配役がそろう
寿一とさくらの対決に先立ってひとつのドラマがあった。寿三郎が、寿一の息子の秀生(羽村仁成)に能の手ほどきをしたところ、筋がいいので、観山の籍に入れたいと言い出した。寿一は、秀生の親権を持っている、元妻のユカ(平岩紙)と弁護士を立てて協議に入った。
話し合いのなかで、寿一とユカが離婚に至った理由が、寿一は家族を顧みずに米国修行に出かけたり、試合のために全国を回ったりしたことにあると述べた。ユカの答えは意表を突くものだった。
「家を顧みなかったのではなくて、2DKのマンションで『殺気』を放っているのが耐えられなかった。米国に行ったのが気に入らなかったのではなくて、帰ってきてしまったことよ」と。
寿一はさくらにこう答えるのだった。
「俺は殺気を放っているし、大事なひとをもう二度と不幸にしたくない」
プロポーズを受けるわけには、いかないというのである。
さくらは、寿一をみつめる。
「寿一さんがもっと好きになりました。あなたは大きすぎる。体だけではなくてその中身も。大阪城ホールのリングを客席から観るぐらいがいい、というのは間違いだと思う。わたしは、殺気も、近くにいても」
クドカンの舞台やドラマ、映画に共通するのは、自分自身が最も登場して欲しい俳優に声をかけていることだろう。
「あまちゃん」では、青春時代のアイドルの小泉今日子をヒロインの母親役に起用した。俳優として所属している「大人企画」のメンバーたちが脇を固めていた。高校の先生役の皆川猿時であり、駅の助役の荒川良々らである。
舞台づくりの発想に近い。今回のドラマも、寿一(長瀬)の元妻役の平岩紙の演技がみせる。
第7回もまた、「能」を三大噺に入れ込むことを忘れない。寿三郎(西田)が、所蔵の能面や装束がなくなっていることに気づく。寿一や寿限無は、痴ほう症のために、ガールズバーの女性たちにやってしまったと確信する。
しかし、犯人は弟子見習いに入門した男で、所蔵物の管理が緩いのをにらんで盗み出していたのだった。
寿限無 「元カノにあげた写真もあったから。忘れたのかと思って」
寿三郎 「ばーか、そのインスタグラムに『いいね』を押しているんだよ」
寿三郎が検査入院した結果、介護度は「自立」から「要介護2」まで悪化していることがわかった。
「三大噺」は、見事な落ちが落語家の腕の見せ所だ。クドカンにも期待できる。
【修正履歴】
訂正して、お詫び申し上げます。
(誤)族旅行から帰宅して、ぼーっとしていると、さくらが自分のスマーフォンをみせて、寿三郎(西田)とのSNSのやりとりの画面を示す。そこには、寿三郎が「旅行から帰ったら、プロポーズする」とあった。
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(正)族旅行から帰宅して、ぼーっとしていると、さくらが自分のスマーフォンをみせて、踊介(永山)とのSNSのやりとりの画面を示す。そこには、踊介が「旅行から帰ったら、プロポーズする」とあった。
(誤)寿一 わすれているんだ。
↓
(正)寿一 すぐ「解散」って言って帰りましたもんね。
(誤)さくら それは、あなたの番だからです。
あなたが答えないと、寿三郎さんにどう答えたらいいかわからいので。
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(正)さくら それは、あなたの番だからです。
あなたが答えないと、踊介さんにどう答えたらいいかわからいので。
(誤)寿一 「バーの女にあげた写真もあったから。忘れたのかと思って」
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(正)寿限無 「元カノにあげた写真もあったから。忘れたのかと思って」
(誤)寿三郎が検査入院した結果、介護度は「自立」から「介護度2」まで悪化していることがわかった。
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(正)寿三郎が検査入院した結果、介護度は「自立」から「要介護2」まで悪化していることがわかった。
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