反対票を投じる姿勢をちらつかせた
しかし、審議の過程で一時、同法案に盛り込まれた「週400ドル」の失業保険支給額、および「今年10月4日まで」とした支給期間について、マンチン議員が「高額過ぎる。支払期間も長すぎる。原案のままでは失業者の就労意欲を減退させる」との理由で反対票を投じる姿勢をちらつかせたことから、ホワイトハウスをあわてさせ、同議員との“取引”成立まで9時間近くも採決が引き延ばされる事態となった。
結果的にホワイトハウス側が支給額「週300ドル」、支払い期間も「9月6日まで」との妥協案を示し、マンチン議員も承諾したことから、なんとか法案可決にこぎつけた。その後、下院本会議でも可決され、大統領署名をへて法案は成立した。
与野党が50対50で勢力が拮抗する難関の上院で法案を通過させることができたことについて、バイデン大統領は、その直後、声明を読み上げ「私は45日前大統領就任時、コロナで困窮した国民に援助の手を差し伸べることを約束した。本日、議会はその約束に向けたジャイアント・ステップを踏み出した」と成果を自賛した。しかし、大統領が上院採決に際し、マンチン議員と直接取引したかどうかについては、報道官は言及を避けたが、その後、大統領が直接、マンチン議員に電話を入れ、説得したことが判明した。
これより先、去る2日、連邦政府の予算を一手に取り仕切るホワイトハウス管理予算局長(OMD)に任命されていたニーラ・タンデン女史が、上院承認審議で多数支持が得られなくなったとして「任命辞退」を正式表明した。その背景には、マンチン議員の反対があった。マンチン議員はタンデン女史の「OMD起用」が取りざたされた当初から、「共和党議員たちに対しかねてから過激な批判を繰り返していた」として「承認拒否」を示唆、これに対し、バイデン大統領は「任命は撤回せず、守り抜く」と強気の姿勢をとり続けたため、その後の成り行きが注目されていた。結局、最後までマンチン議員は反対姿勢を崩さず、ホワイトハウスとしては、野党共和党の他の穏健派議員の切り崩しを図ったものの、支持を得られず、最後は任命撤回のやむなきに至った。