2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年4月1日

加速するワクチン接種

 次に、新型コロナウイルスのワクチン接種が加速している点も、バイデン氏の再出馬の発言に影響を与えたのかもしれません。バイデン氏は大統領就任後100日で、1億回分の接種を行うという野心的な数値目標を設定しました。ところが、今年の3月19日でその目標を達成したのです。わずか58日でした。

 ホワイトハウスの発表によれば、1日平均(3月12~18日)で250万人の接種を実施しました。トランプ前政権は1日平均(1月13~19日)が90万人でしたので、約3倍弱のペースでバイデン政権は接種を行ったことになります。

 3月30日現在で、米国では1億3100万人が少なくとも接種を1回終えました。バイデン大統領は3月29日、2億回分の接種を4月19日までに行うと宣言し、新たな数値目標を立てました。仮にこの大胆な目標が達成されると、米国では18歳以上の成人の90%が、少なくとも接種を1回受けたことになります。

 米ABCニュースとイプソス(21年3月26~27日実施)による共同世論調査では、バイデン氏の新型コロナ対策の支持率は72%で、不支持率は28%です。超党派で支持を得ているとみて間違いないでしょう。これは同氏の強みです。

「民主主義VS.独裁主義」と「人権VS.非人権」

 バイデン大統領は「民主主義VS.独裁主義」及び「人権VS.非人権」の対立構図を作り、同盟国と友好国の連携を強化して、中国、ロシア及び北朝鮮といった独裁国家に対抗する姿勢をみせています。周知の通り、バイデン氏は20年大統領選挙で「トランプは独裁者と仲良くなった」「トランプは同盟国を軽視している」と繰り返し批判しました。

 シカゴ・グローバル評議会が21年1月発表した世論調査によれば、米国民の90%が「同盟国を維持することが米国の外交政策の目的を達成する最も効果的な方法である」と回答しました。トランプ前政権でギクシャクした同盟国との関係改善に取り組んでいるバイデン政権の外交手法は、米国民から確実に支持を得ています。

 加えて、バイデン氏は米国民の反中感情を汲み取った外交を展開しています。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査(21年2月1~7日実施)によれば、米国民の55%が中国を「競争相手」、34%が「敵」と捉えています。「パートナー」と回答したのはわずか9%でした。

 バイデン大統領は中国の人権侵害では一歩も譲歩しない強い態度を示しています。習近平国家主席に「あなたやあなたの国が露骨に人権を侵害し続けるならば、我々は世界の注目を集めるために声を上げ、中国で人権侵害が起きていることを明らかにするだろう」と、明確に伝えたと語りました。同調査では米国民の53%が「バイデン政権は中国に効果的に対処できる」と答えました。人権を軸にして中国を揺さぶる同政権の戦略が、米国民から一定の評価を受けていると言えそうです。


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