2024年11月25日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年3月26日

 今回のテーマは、「日本の選択、米中の狭間で」です。米国アラスカ州アンカレッジで2日間にわたり米中外交トップによる会談が開催されました。米国側からアントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、中国側からは楊潔篪・共産党政治局員及び王毅・国務委員兼外相が出席しました。

 本稿では、米中外交トップ会談をコミュニケーションの視点から分析し、その結果を踏まえて4月前半に首都ワシントンで開催される日米首脳会談の行方について述べます。

(gAlxeyPnferov/gettyimages)

なぜ「内政干渉」をするのか?

 米中外交トップ会談で中国側は新疆ウイルグ自治区、香港及び台湾問題は米国の内政干渉であると強調し、一歩も譲歩しない姿勢を示しました。これに対して、ブリンケン国務長官は同自治区でのイスラム系少数民族に対する人権侵害、香港における自治の浸食及び台湾の民主主義抑圧は、「単なる国内問題ではない」と指摘し、「これらの問題を取り上げる義務がある」と反論しました。

 以前述べましたが、ブリンケン氏は国務長官就任の日のビデオメッセージで、アウシュビッツなど複数の強制収容所で生活したホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の生存者である義父を紹介しました。そのうえで、「ホロコーストは自然に発生したのではない。私たちはホロコースが起きるのを許したのだ。私たちにはホロコーストを阻止する責任がある」と主張しました。

 ブリンケン氏は米議会での指名承認公聴会で、新疆ウイグル自治区においてイスラム系少数民族に対して、民族を破壊する意図をもって危害を加える行為「ジェノサイド」が起きているという認識を示しました。義父の影響を受けた同氏は中国によるジェノサイドを止める義務があると強く信じており、香港及び台湾の民主主義抑圧に関しても放置せずに対処する意思表示をしています。

 ブリンケン氏にとって人権侵害の傍観者は、「共犯者」であるからです。


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