海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年3月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

(yalcinsonat1/getyimages)

 今回のテーマは、「中国『ワクチン外交』に対するバイデンの巻き返し」です。中国が自国製の新型コロナウイルスワクチンを武器にして影響力を及ぼそうとしています。

 中国はどのような「ワクチン外交」を展開しているのでしょうか。なぜ、米国はワクチン外交で中国に出遅れたのでしょうか。そして、バイデン政権はどのようにして巻き返しを図ろうとしているのでしょうか。本稿では、中国のワクチン外交とそれに対抗するバイデン政権の対中戦略について述べます。

中国「ワクチン外交」のパワー

 米国は明らかに中国の「ワクチン外交」に遅れをとっています。AP通信によれば、中国は約5億回分の新型コロナウイルスのワクチンを、45カ国以上に提供することを約束しました。

 中国は主としてインド太平洋地域でワクチン外交を積極的に展開しています。標的となっている国は、パキスタン、カンボジア、インドネシア、フィリピン及びマレーシア等です。中でもフィリピンに注目です。中国が主張する南シナ海における領有権及び海洋権益と、ワクチンを引き換えにして、批判をトーンダウンさせる狙いがあるのでしょう。

 「ザ・ディプロマット(電子版)」は、未確認であるとしながらも、「中国がトルコに対してワクチンの返礼として、ウイグル族の難民を送還させる条約を承認するように圧力をかけているという情報がある」と報じています。トルコに20年12月30日、中国の製薬会社シノバック・バイオテックが開発した300万回分のワクチンが到着しました。トルコでは21年1月14日から接種が始まっています。

 中国本土で弾圧を受けているウイグル族はトルコで難民申請をしています。フィリピンと同様、トルコでも中国のワクチン供給の狙いが透けてみえます。

 もちろん中国がワクチン外交を展開しているのは、インド太平洋地域のみではありません。同国は1月22日、第1弾としてシノバックのワクチンをメキシコに供給しました。さらに、第2弾として2月27日にも同社のワクチン提供をしています。

 加えて、中国はシノバック製ワクチンをブラジルに提供しました。チリは中国から400万回分のワクチン提供を受けました。ワクチンを武器にした中国の影響力は米国の裏庭にも及んでいます。

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