今回のテーマは、「共和党、トランプ派の残党」です。米上院共和党トップのミッチ・マコネル院内総務が「共和党のガン」と痛烈に批判する新人の下院議員がいます。昨年の連邦下院選で南部ジョージア州第14選挙区から共和党候補として出馬し、勝利を収めたマージョリー・テイラー・グリーン議員(46)です。マコネル氏はグリーン氏を名指しで非難はしていませんが、「共和党のガン」は同氏であることは確かです。
一体グリーン下院議員とはどのような人物なのでしょうか。また、グリーン氏は共和党にどういった影響を及ぼしているのでしょうか。本稿ではグリーン議員の共和党に対する影響と、そこから見えてくる民主党の機会を中心に述べます。
「9.11はフェイク」
グリーン下院議員は、1月6日に発生した米連邦議会議事堂乱入事件で主要な役割を果たしたQアノンの信者で、陰謀論者です。
例えば、12年12月に東部コネチカット州ニュータウンにあるサンディフック小学校で発生した銃乱射事件は、「仕組まれたもの」と主張しました。グリーン氏によれば、ナンシー・ペロシ下院議長が銃規制を促進するために、学校における銃乱射事件を積極的に応援しているというのです。同氏はペロシ下院議長(民主党)とヒラリー・クリントン元国務長官の処刑を訴えています。
グリーン議員は18年2月の南部フロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射事件の生存者につきまとい、「臆病者」と罵倒し、嫌がらせをしたこともあります。
さらに01年9月11日の米同時多発テロ事件に関しても、グリーン氏は驚いた発言をしました。米国防総省の本庁舎に飛行機が突入した証拠がないので、フェイク(偽)であると議論したのです。同氏によれば、「9.11はフェイク」ということになります。ただ、この発言については撤回しました。
これだけ物議を醸しているのにもかかわらず、グリーン氏は20年米連邦下院選で民主党候補に対して74.6%の得票率を得て圧勝しました。ジョージア州第14選挙区の人口の割合は、白人75.7%、ヒスパニック系10.2%、黒人9.32%、アジア系0.67%で、白人有権者が支配的な選挙区です。上で紹介したグリーン氏のメッセージが白人有権者から圧倒的支持を得たということです。