2024年4月26日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年2月12日

共和党内の「複雑な関係」

 グリーン下院議員を巡って共和党に亀裂が生じています。前述した通り、マコネル院内総務はQアノン信者に反対の立場をとっています。これに対して、ドナルド・トランプ前大統領はグリーン議員を強く支持し、下院共和党トップのケビン・マッカーシー院内総務は同議員をかばっています。共和党内でかなり温度差がある訳です。

 これに共和党ナンバー3のリズ・チェイニー下院議員(西部ワイオミング州)の問題が絡み、関係が複雑化しています。ディック・チェイニー元副大統領の娘であるチェイニー下院議員は、トランプ大統領弾劾に賛成票を投じた10人の下院議員の1人です。チェイニー氏は、トランプ前大統領を「党の将来に役立つ人物ではない」と批判し、議事堂乱入事件に関する責任を厳しく追及しました。

 これに対してトランプ氏は、22年秋の中間選挙でチェイニー下院議員に対して対立候補を立てる構えです。しかし、マッカーシー院内総務はチェイニー議員を擁護する立場に回っています。

 では、有権者は共和党の内紛をどのように見ているのでしょうか。世論調査で定評がある米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の調査(21年1月28~2月1日実施)によれば、共和党支持者の31%がマコネル氏を支持、51%が不支持と答えました。一方、47%がマッカーシー氏を支持、25%が不支持と回答しました。

 グリーン氏を「共和党のガン」とみているマコネル氏ではなく、陰謀論を展開し過激な発言をする同氏を擁護したマッカーシー氏に軍配が上がりました。ここから現在の共和党が大統領選挙後もトランプ色が濃いことがはっきり読み取れます。

トランプ共和党=過激な極右集団

 昨年無党派が初めて共和党員の数を抜きました。その結果、党員の割合は民主党40%、無党派30%、共和党29%になっています。今後、共和党は党員数を減らす可能性が高いといえます。

 米ABCニュースとグローバル世論調査会社イプソスの調査(21年2月5~6日実施)によれば、「急進的な過激派はどちらの党に多く所属していると思いますか」という質問に対して、25%が民主党、42%が共和党、32%が「同じ」と回答しました。

 今回の議事堂乱入事件では、プラウド・ボーイズ、3パーセント、Qアノン、オウス・キーパーズなどのトランプ前大統領を支持する過激な極右団体が参加していました。極右団体のシンボルやスローガンが印刷された防弾チョッキ及びヘルメットを被った暴徒が、議事堂に乱入している様子が確認されています。

 特に、上院の議場を占拠したQアノンの信者で「Qシャーマン」と名乗る白人男性と仲間の映像がメディアを通じて繰り返し流れました。民主党は「トランプ共和党=過激な極右集団」というレッテルを貼ることができました。


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