今回のテーマは、「日本とバイデン政権、そのとき日本はどう動くのか?」です。ジョー・バイデン米大統領の閣僚人事から、日本が直面する課題が明確に見えます。電気自動車(EV)と人権問題です。
一体、電気自動車と人権問題が日本に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。本稿ではこの2つの課題に焦点を当てて述べます。
電気自動車と日本に対する影響
バイデン大統領はエネルギー長官にジェニファー・グランホルム元ミシガン州知事を任命しました。グランホルム氏は電気自動車、太陽光及び風力発電推進派です。運輸長官には日本でもお馴染みのピート・ブティジェッジインディアナ州サウスベント元市長が2月2日、米上院本会議で承認されました。ブティジェッジ氏は同性愛者で、アフガニスタンに従軍した経験があります。グランホルム氏と同様、ブティジェッジ氏も電気自動車推進派です。
バイデン大統領は「バイ・アメリカン法」を用いて、「メイド・イン・USA」の製品を連邦政府が買い上げ、労働者の雇用を創出するという政策を打ち出しています。脱炭素社会の実現を目指すバイデン氏は、全州の郵便局並びに米軍で使用する自動車を電動化するでしょう。スクールバスの電気自動車への移行もめざすものと思われます。
ただ、外国企業が製造した「メイド・イン・USA」を締め出す懸念があります。日系自動車メーカー及び部品メーカーが、バイデン政権の電気自動車促進の取り組みに参加できるのかがポイントになります。
トランプ支持者と電気自動車
バイデン大統領は電気自動車関連の事業や開発、研究で100万人の新規雇用を生むと語気を強めました。全米50万カ所に充電スタンドを設置するとも明かしました。政府が積極的に電気自動車をサポートしてインフラ整備を行う意思を示したと言えます。
加えて、バイデン氏は電気自動車を普及させるために、購入者を対象に消費税を引き下げるかもしれません。
ただし課題もあります。中国がリチウムイオン電池を生産する工場の数で米国を大幅に上回っていることです。
電気自動車の推進を妨げる壁もあります。電気自動車に対するイメージです。
中西部オハイオ州の日系自動車部品メーカーの経営幹部は、筆者のインタビューに対して、電気自動車には富裕層及びインテリ層のイメージが付きまとっていると指摘しました。経済格差の影が見え隠れすると言うのです。
さらに、この経営幹部はトランプ支持者が電気自動車普及の障害になる可能性があるとみていました。というのは、大型のピックアップトラックはトランプ支持者の象徴だからです。自動車産業が盛んなオハイオ州でさえ、どのぐらいのスピードで自動車の電動化が進むのかは疑問だと語りました。
確かに、「ピックアップトラックのトランプ支持者」と「電気自動車の急進左派」の対立構図があります。前者は地球温暖化は急進左派のでっち上げだと非難します。一方、後者は地球温暖化は差し迫った危機であると強調します。この世界観及び信念の相違が、バイデン氏の脱炭素社会の実現に向けて阻害要因になる公算が高いです。