海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年1月9日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

(ginosphotos/gettyimages)

 今回のテーマは、「トランプ、アウト!『クーデター』未遂事件」です。トランプ支持者による米連邦議会乱入から一夜明け、トランプ大統領及びバイデン次期大統領が声明を出しました。トランプ・バイデン両氏は今回の連邦議会襲撃事件に関して、一体どのような反応を示したのでしょうか。

 また、民主党議員はトランプ政権並びに議会共和党に対してどのような要求を突きつけたのでしょうか。本稿では、2024年米大統領選挙への影響も含めて、この襲撃事件を分析します。

もし暴徒がBLMの活動家だったら?

 1月6日に発生したトランプ支持者による議会襲撃事件の翌7日、トランプ大統領は自身のツイッターに動画を投稿しました。その中で、即座に議会に州兵を動員したと述べました。しかし、この声明は米メディアの報道と食い違っています。

 米メディアによれば、テレビで暴徒による議会占拠の様子を観ていたトランプ大統領は、州兵動員の要請を拒みました。当初、トランプ氏は忠誠心の高い支持者に対する州兵動員は受け入れ難かったのでしょう。それとは対照的に、昨年白人警察官による黒人暴行死事件に端を発した抗議運動家と暴徒に対しては、躊躇せず州兵を動員するどころか、連邦軍の出動までも辞さない構えを見せました。

 ジョー・バイデン次期大統領は、自身のツイッターに「もし昨日の暴徒がBlack Lives Matter(BLM:黒人の命だって大切だ)の活動家だったら、議会を襲撃した暴徒と同じ扱いを受けただろうか」と投稿して疑問を投げかけました。トランプ支持者が米議会を占拠した事件で、5人の死者と82人の逮捕者が出ました。5人のうち1人は退役軍人の白人女性で警察に射殺されました。

 大抵のトランプ支持者の暴徒は白人でした。おそらくバイデン氏は、暴徒がBLMの活動家だったら警察から異なった扱いを受けていたと言いたいのでしょう。前回の米大統領選挙でトランプ氏は、人種差別に反対する活動家ではなく、彼らを取り締まる警察を擁護しました。

 率直に言ってしまえば、バイデン次期大統領は議会を占拠した暴徒がBLMの活動家であったならば、警察によって射殺されて多くの死者と逮捕者が出ただろうと言いたいのです。

 実際、一部の警察は議事堂を出ていく暴徒を逮捕しませんでした。それどころか、暴徒と自撮りをする警察もいました。

 この件に関して、コロンビア大学で教鞭をとっている白人女性(60歳代)にインタビューをしたところ、バイデン氏と全く同じ視点で警察の対応を観察していました。人種によって警察の対応に違いが現れるのです。

第25条か弾劾か?

 トランプ大統領は7日の動画で、米国は「法と秩序」の国であると述べ、国民に冷静になることを促し、「私は民主主義を守る」と強調しました。ただ、トランプ氏の6日の言動は全く異なっていました。ワシントンに集まった支持者を扇動し、「無秩序状態」を作り、民主主義を完全に冒瀆しました。

 バイデン次期大統領と同じ中道穏健派で、下院外交委員会に所属しているジェリー・コノリー議員(民主党・南部バージニア州第11選挙区選出)は、「200年以上にわたって米国では政権の平和的移行が行われてきた」と指摘しました。そのうえで、今回の暴動を民主主義の下で行われた選挙結果を覆すためのトランプ大統領による「煽動」と「クーデター」と断言しました。コノリー氏の言葉を借りれば、トランプ氏による「クーデター」未遂事件だったのです。

 コノリー議員の批判は議会共和党にも向けられました。「下院共和党は4年間、明らかな犯罪の証拠があるのにもかかわらず、煽動政治家(トランプ氏)を勇気づけてきた」と非難しました。共和党の責任も重いというのです。

 さらに、マイク・ペンス副大統領と閣僚が即座に合衆国憲法修正第25条を適用することを要求しました。合衆国憲法修正第25条には副大統領への権限移譲が明記されています。大統領が職務上の権限と義務の遂行が不可能になった場合、副大統領と閣僚が連邦議会に文書による申し立てができます。副大統領と閣僚の過半数が賛成すれば、トランプ大統領解任は可能になります。

 合衆国憲法修正第25条が適用されなければ、コノリー議員はトランプ大統領は弾劾されなければならないと主張しました。民主党指導部のナンシー・ペロシ下院議長は第25条が発動されなければ、即座に議会を招集してトランプ弾劾の手続きに入ると述べています。

 バイデン氏の就任式まで残り13日になり実現が難しいとの見解がありますが、民主党はそれでも第25条の適用ないしスピード弾劾に向けて動きます。

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