海野素央の Love Trumps Hate

2020年12月23日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプが約7400万票獲得できた理由」です。2020年米大統領選挙でドナルド・トランプ大統領は、現職大統領として最高の約7400万票を獲得しました。16年の大統領選挙では約6300万票を得たので、約1100万票も上乗せしたことになります。

上院の決選投票の応援でジョージア州入りして大歓迎を受けるイヴァンカ・トランプ氏(AP/AFLO)

 その背景には、一体どのような選挙戦略があったのでしょうか。また、今後どの時点でトランプ大統領の共和党における影響力は低下するのでしょうか。本稿では、トランプ氏が約7400万票を獲得できた理由及び、共和党における影響力について述べます。

「責任転嫁」「ノスタルジア」と「未来志向」

 トランプ大統領は当初、新型コロナウイルスを「目に見えない敵」と呼び、自分をコロナと戦う米軍最高司令官として演出しました。この戦略の狙いは支持率アップでしたが、不発に終わりました。

 新型コロナウイルスの感染拡大を制御できず、新規感染者数及び死者数が急増したからです。バイデン氏はトランプ氏は白旗を掲げてコロナとの戦場から退場したと非難しました。

 そこでトランプ氏は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、「反中国感情」が強い米国人の心に訴えて、同国への責任転嫁を強めていったのです。周知の通り、前回の米大統領選挙ではトランプ大統領はメキシコからの移民を標的にして、「反移民感情」が強い有権者の心に火をつけました。

 筆者は20年3月、中西部オハイオ州コロンバスでホテルの送迎バスの運転手をしているトランプ支持者の白人男性に、同大統領のコロナ対応について質問をしてみました。この支持者は「中国人を標的にする戦略は好きではないよ」と語り、不快感を示しました。ただそう言いながらも、彼はトランプ氏に投票しないとは決して言いませんでした。おそらく、中国責任論に同意できなくてもトランプ氏に投票した支持者がいるということです。

 「責任転嫁」に加えて、トランプ大統領は支持者を集めた大規模集会で、「中国ウイルスが米国に上陸する前まで経済は好調であった」と、繰り返し強調しました。その上で、有権者に向かって来年は経済が「スーパーV字回復」をして、素晴らしい年になると豪語したのです。

 選挙期間中、トランプ氏は「ノスタルジア」と「未来志向」を組み合わせて訴え続けました。そうすることで、「経済を回復をできるのはバイデンではなく、実績のある自分だ」という印象を有権者に植え付けたのです。

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