2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年12月29日

 今回のテーマは、「『脱トランプ党』の必須条件と可能性」です。与党共和党はこの4年間でドナルド・トランプ米大統領の支配下に入り、すっかり「トランプ党」に変身してしまいました。熱狂的なトランプ支持者の票が欲しい共和党上下両院の議員は、トランプ大統領を称賛して彼に服従しました。

 ところが、2020年米大統領選挙で野党民主党のジョー・バイデン氏の勝利が確定すると、トランプ氏と共和党の関係に微妙な変化が見えてきました。次の4年間で共和党はトランプ党を脱出できるのでしょうか。仮にできるとすれば、どのような条件が整えばよいのでしょうか。

 本稿では、「脱トランプ党」の必須条件とその可能性について述べます。

(vivalapenler/gettyimages)

トランプの共和党に対する怒りと憎しみ

 選挙人による投票が12月14日に行われ、バイデン氏の勝利が決定すると、共和党トップのミッチ・マコネル院内総務は同氏の勝利を祝福しました。

 マコネル院内総務の妻は、トランプ大統領から閣僚のポジションをもらった台湾系米国人のイレーン・チャオ運輸長官です。チャオ氏はいわゆる「人質」です。マコネル氏がトランプ氏に逆らえなかった理由はここにあります。ただ、選挙人が確定し、トランプ政権は残り40日を切ったので、マコネル氏はトランプ氏から距離を開ける絶好の機会だと判断したのでしょう。

 これに対して、トランプ大統領は同月25日、自身のツイッターに「私は今回の選挙でミッチを含めた少なくとも8人の(共和党)上院議員を救った。彼らは私が敵(急進左派の民主党)と戦っているのを傍観している。私は決して忘れない!」と、共和党議員に対して怒りと憎しみに満ちた投稿をしました。

 トランプ大統領は同月27日、マコネル院内総務と共和党を標的にして「彼らは何もしない(中略)。戦わない!」と、再度自身のツイッターでつぶやきました。加えて、米連邦最高裁判所を「完全な無能」とレッテルを貼り、司法省と連邦捜査局(FBI)を「米国史上最大の不正選挙に対して何もしない」とツイッターに投稿して批判しました。

 特に、トランプ氏は共和党をコントロールできなくなったことに激怒しています。

共和党のトランプ支持率低下

 ではどのような条件が整えば、共和党はトランプ党から脱出し、本来の党に戻ることができるのでしょうか。「脱トランプ党」実現のための3つの必須条件を挙げてみましょう。

 第1の条件は、共和党におけるトランプ大統領の支持率が低下することです。ロイター通信とグローバル調査会社イプソスが11月3日の投開票日直前に行った共同世論調査(20年10月29~11月2日実施)をみると、共和党のトランプ支持率は87%で、不支持率は12%でした。

 ところが、最新の同調査(同年12月18~22日実施)では、共和党のトランプ支持率は81%で、投開票日直前の数字と比較すると6ポイント下がりました。一方、同党のトランプ不支持率は18%で、逆に6ポイント上昇しています。

 仮にトランプ氏が来年1月20日のバイデン氏の就任式までに、自分ないし子供たちに恩赦を出せば、共和党における支持率はさらに低下するでしょう。

 USAトゥデイ紙とサフォーク大学(東部マサチューセッツ州)の共同世論調査(20年12月16~20日実施)によれば、約25%の有権者が自己恩赦を支持すると回答しました。同調査では約44%が今回の大統領選挙でトランプ大統領に投票したと答えています。ということは、トランプ支持者の約20%が自己恩赦に否定的であると解釈できます。

 一方、同調査で子供たち及び側近に対する恩赦を支持すると回答した有権者は約29%でした。従って、こちらは約15%のトランプ支持者が子供たちと側近の恩赦に反対の立場をとっていることになります。つまり、トランプ支持者の中にも、自己恩赦及び子供たちと側近に対する恩赦を好意的に捉えていない者が一定数存在する訳です。

 加えて、様々な疑惑を抱えているトランプ氏が仮に起訴されれば、共和党議員の中には同氏と距離を開ける議員が益々出てくることは確かです。そのとき、トランプ氏は今以上に共和党における求心力を失い、支持率は低下していくでしょう。


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