2024年11月25日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年1月9日

2024年大統領選挙への影響

 仮に合衆国憲法修正第25条が適用されても、ペンス氏はトランプ大統領に事前に恩赦を出さないでしょう。もし出せば、米国民からトランプ支持者による議会襲撃を正当化したと解釈され、24年大統領選挙での勝利の可能性が遠のくからです。

 ロイター通信とグローバル世論会社イプソスの共同世論調査(21年1月4~5日実施)によれば、共和党支持者におけるトランプ大統領の支持率は77%まで下がりました。昨年11月3日の大統領選挙直前に行った同調査では87%の共和党支持者がトランプ支持でしたので、10ポイントも低下したことになります。逆に、共和党支持者におけるトランプ不支持は12%から22%になり、10ポイント上昇しました。「トランプを強く支持する」は、大統領選挙直前の調査と比較すると、58%から51%になり8ポイント減少しています。

 その主たる理由は、例の公開された電話会談の記録にあるでしょう。トランプ大統領は1月2日、南部ジョージア州のブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官に電話を入れ、脅迫して「票の改ざん」を迫りました。この会話のテープが公開され、それが支持率に影響を及ぼした公算が高いといえます。今回のトランプ支持者による議会襲撃事件で、共和党支持者におけるさらなる支持率低下は必至です。

 「票の改ざん」要求及び議会襲撃事件で、トランプ大統領に対する風当たりが一気に強くなりました。トランプ氏は24年大統領選再出馬が困難になってきました。

 そうなると、次の共和党大統領候補指名獲得を狙っているとみられているペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ニッキー・ヘイリー元国連大使、マルコ・ルビオ上院議員(南部フロリダ州)、トム・コットン上院議員(南部アーカンソー州)等は、出馬の準備に取りかかるでしょう。

 ただし今回の議会襲撃事件で、トランプ支持者を頼りにしてきた彼らは、支持者と距離を開ける可能性が高いです。逆に大統領選挙の投票結果を認定する上下両院合同会議で、不正があったかを確認するための調査委員会を開く必要性を訴えたテッド・クルーズ上院議員(南部テキサス州)は、トランプ大統領に最も忠誠心のある後継者を演出して、トランプ支持者の票の獲得に出るでしょう。

 一方、バイデン氏ないしカマラ・ハリス氏は24年大統領選挙でトランプ支持者による議会乱入及び占拠の生々しい映像や写真を活用できるアドバンテージを得ました。

  
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