海野素央の Love Trumps Hate

2021年1月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「いざ決戦!2021年を占うジョージア州上院選」です。1月5日に米南部ジョージア州で上院選の決戦投票が行われます。ジョージア州は連邦上院選で50%以上の得票率に達した候補がいない場合、上位2名による決戦投票が実施されます。このユニークな選挙システムを導入しているのは、他に南部ルイジアナ州のみで全米に2州しかありません。

(teddyandmia/gettyimages)

 20年11月に大統領選挙と同時に実施された上院選で、民主党が48議席、共和党が50議席を確保しました。今回の決戦投票で、共和党が2議席のうち1議席を取れば多数派を維持できます。

 逆に民主党が2議席を獲得すると、「50対50」になります。カマラ・ハリス次期副大統領が上院の議長を務め、決定票を投じるので「51対50」になり、民主党が事実上の「多数派」に返り咲きます。仮にそうなれば、ジョー・バイデン次期大統領は、閣僚人事及び最高裁判事に関する承認公聴会を有利に進めることができます。

 そこで本稿では、決戦投票における民主党2議席獲得の可能性に焦点を当てます。

対照的な共和・民主両党候補

 元ビジネスマンで裕福な現職共和党上院議員デービット・パーデユー氏(71)に挑むのが、元ドキュメンタリー映画作成者であるジョン・オソフ氏(33)です。20年11月の上院選におけるパーデユー氏の得票率は49.7%で、過半数の50%まで僅か0.3ポイント足りませんでした。オソフ氏の得票率は47.9%で、パーデユー氏との得票差は約8万8000票でした。

 一方ジョージア州の上院補欠選挙では、もう1人の現職共和党上院議員ケリー・ロフラー氏(50)に、黒人の牧師ラファエル・ワーノック氏(51)が挑戦します。ロフラー氏の夫はニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社である米インターコンチネンタル取引所(ICE)の会長兼最高経営責任者(CEO)ジェフリー・シュプレッヒャー氏(65)です。ロフラー氏は超富裕層です。

 これに対して、神学校を卒業したワーノック氏はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏が牧師を務めていたジョージア州アトランタにある黒人教会の牧師です。貧困家族で育ったワーノック氏は、12人兄弟の11番目でした。兄弟の中で初めて大学進学をしました。

 昨年11月のジョージア州上院補欠選挙に、20人(内訳 民主党8人、共和党6人、無所属4人、緑の党1人、リバタリアン党1人)が立候補して戦いました。その結果、ワーノック氏は32.9%、ロフラー氏が25.9%の得票率を得て、2人が決戦投票に進みました。

 得票差をみますと、ワーノック氏が約34万票もロフラー氏をリードしました。ただ、3位の共和党候補が98万票を獲得しています。いづれにしても、決戦投票は大接戦になっています。

足を引っ張るトランプ

 20年11月の大統領選挙においてドナルド・トランプ大統領はジョージア州で、バイデン氏に対して僅か0.2ポイント差で敗れ、選挙人「16」を獲得できませんでした。得票数で1万1779票差でした。

 民主党のジョージア州における勝利は1992年以来です。18年に行われた同州の知事選で、民主党のステイシー・エイブラムス氏は共和党のブライアン・ケンプ氏に大接戦の末、1.4ポイント差で敗れました。その後、民主党は有権者登録者数を80万人も増やしました。これがバイデン氏勝利の原因の1つになりました。

 確固たる証拠を示さずに一方的に不正選挙が行われたと主張するトランプ大統領は、バイデン氏の勝利を確定したジョージア州知事のケンプ氏、州務長官のブラッド・ラッフェンスパーガー氏及び投票管理責任者のガブリエル・スターリン氏(全て共和党)を激しく非難して、同党を分断しました。トランプ氏の言動は、パーデユー氏とロフト氏にプラスに働かないとみられています。

 さらに、トランプ大統領及び弁護団は同州における選挙に不正があったと訴え、信頼性を損ねて、共和党支持者の投票意欲を低下させました。おそらく、1月5日の投票日に投票に出向かない共和党支持者が出てくるでしょう。これも共和党にとってマイナス要因になることは間違いありません。

 世論調査の分析を行う「ファイブサーティエイト(FiveThirtyEight)」によれば、1月2日時点でオソフ氏の支持率は48.7%、パーデユー氏は47.5%です。オソフ氏がパーデユー氏を1.2ポイントリードしています。一方、ワーノック氏の支持率は49.1%、ロフラー氏は47.3%です。こちらも、民主党のワーノック氏が1.8ポイント上回っています。

 ジョージア州に拠点を置く保守系の世論調査会社トラファルガーの調査結果もみてみましょう。トラファルガーはトランプ大統領と共和党の応援団です。そのトラファルガーが20年12月29日に発表した調査結果では、支持率でオソフ氏がパーデュー氏を2.7ポイント、ワーノック氏がロフラー氏を0.8ポイントそれぞれ上回っています。

 トランプ大統領と弁護団の言動は、明らかに2人の共和党現職上院議員の足を引っ張ています。

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