海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年2月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプ弾劾裁判、3つの疑問点」です。米連邦上院(定数100)における2回目のトランプ弾劾裁判は、僅か5日間で無罪評決が下されるというスピード裁判でした。弾劾に必要な出席議員の3分の2に当たる67人には届きませんでしたが、野党共和党から7人が造反し、超党派で57人がトランプ有罪に投票をしました。 

 ドナルド・トランプ前大統領に無罪評決が下った本当の理由は何でしょうか。なぜトランプ氏は命の危険にさらされていたマイク・ペンス副大統領を即座に助けなかったのでしょうか。ジョー・バイデン大統領はどうして弾劾裁判と距離を置いたのでしょうか。本稿では3つの疑問点に答えます。

(stokio/gettyimages)

なぜトランプに無罪評決が下ったのか?

 トランプ前大統領に有罪評決が下るか否かの鍵を握る人物は、共和党上院トップのミッチ・マコネル院内総務でした。マコネル院内総務は1月6日に発生した米連邦議会議事堂乱入事件について、トランプ氏が暴動を挑発した点に疑問の余地はないと主張したのにも関わらず、無罪に投票しました。その主たる理由として、マコネル氏は大統領職を退任したトランプ氏を弾劾するのは違憲であることを挙げました。

 民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、マコネル院内総務に対して次のように反論しました。下院はトランプ氏を1月13日に弾劾し、同月15日に弾劾管理人(検事官役に相当)を務める9人の民主党下院議員が「暴動の扇動」の条項を明記した決議案を上院に提出しました。

 ところが、マコネル院内総務は休会中を理由にして受理しなかったというのです。トランプ前大統領在任中の弾劾裁判を拒否し、意図的に退任まで先延ばしにしたのです。そうすることによって、退任した大統領の弾劾裁判は違憲だと議論できるからです。マコネル氏は憲法論でしか民主党に勝てないと政治的計算をしたのでしょう。

 1月20日の大統領就任式の前に上院議員を招集できたのにもかかわらず、マコネル氏はトランプ無罪の「言い訳」を作るために、大統領退任後に弾劾裁判を開く必要があったのです。そこで休会を続けたと、ペロシ下院議長は無罪評決後の記者会見で語気を強めました。その結果、トランプ弾劾の勢いが止まり、弾劾の機会が「盗まれた」とまで言い切りました。

 ペロシ下院議長はマコネル院内総務を「不誠実だ」と呼び厳しく批判しました。トランプ無罪の背景には、マコネル氏の弾劾裁判日程の政治的及び戦略的利用があると確信しているからです。

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