2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年3月17日

「クアッドVS.中国」の対立構図

 では、どのようにしてバイデン大統領は中国に巻き返しを図るのでしょうか。日米豪印の4カ国(通称クアッド:英語で「4つ」の意味)」による連携を強化し、中国の「ワクチン外交」に対抗していく意図が明確にみえます。

 そもそもクワッドは04年のスマトラ島沖大地震における被災地救援のために07年に結成されましたが、08年にオーストラリアのケビン・ラッド首相(当時)が反対し離脱したために機能しませんでした。その後、トランプ前政権下で17年にクアッドは再開します。

 バイデン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、オーストラリアのスコット・モリソン首相及び菅義偉首相は3月14日、米ワシントン・ポスト紙に共同寄稿し、その中で「我々は一緒に安全で、(価格が)手ごろで効果的なワクチンをインドで生産拡大し加速することを約束する」と述べました。

 クアッドは「役割分担」と「実務的協力」を2本柱にしています。役割分担とは4カ国がそれぞれの強みを発揮することです。具体的に言うと、米国は研究開発力や技術力、インドは製造力、日本と米国は融資力及びオーストラリアは供給力になります。これらを有機的に組み合わせて4カ国が実務的に協力をします。

 新型コロナウイルスのワクチンに関して言えば、米国と日本がインドに資金支援をして、米製薬会社のノバックスとJ&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)の委託で、インド製薬会社バイオロジカルEでワクチンを製造します。22年末までに10億回分のワクチンを製造し、オーストラリアの物流技術を活用して東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋諸島及びインド洋地域に提供するという仕組みです。

 民主国家4カ国が結束して中国に対峙していく訳です。クアッドがバイデン政権の対中戦略の中心に位置づけられたことにより、「クアッドVS.中国」という対立構造が鮮明になってきました。

 バイデン大統領の対中戦略を比喩を用いて表現すると、「1本の矢では簡単に折られてしまうが、4本を束ねれば容易に折れないので、4カ国は結束をして中国に対抗しよう」になります。

  
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