なぜ人権問題なのか?
次に、バイデン氏は菅氏に中国の人権問題においてどの程度の協力を得ることができるのか、感触を探るでしょう。バイデン政権が中国に行動変容をもたらすために、同国からの輸入品に追加関税をかける場合、日本も一緒に行動をとることができるのかを確認するかもしれません。
仮に日本が中国製品に追加関税をかければ、中国は日本製品と同国進出日系企業を対象に報復措置をとることは確かです。当然ですが、自民党指導部及び経済界は日中貿易戦争を決して望んでいないでしょう。経済関係で中国を刺激したくないというのが本音です。
ただ、ブリンケン氏は人権が経済活動の土台にあると捉えているフシがあります。経済よりも人権重視です。
以前紹介しましたが、米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによる調査(21年2月1~7日実施)では、米国民の70%が「中国との経済関係が悪化しても、中国における人権問題を重視するべきである」と回答しました。
しかも興味深いことに、同調査では77%の保守派の共和党支持者及び、76%のリベラル派の民主党支持者が、中国に対して経済よりも人権を優先すべきだと答えました。つまり、超党派で「人権ファースト、経済セカンド」を支持しているのです。明らかに中国市場をみていた米国民に変化が起きています。
昨年5月25日に中西部ミネソタ州で発生した白人警察官による黒人男性殺害事件は、米国社会の分断を鮮明にしましたが、バイデン氏にとって対中政策における人権問題は逆に社会を結束させる極めて重要なファクターです。この点は看過できません。