2023年12月7日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年4月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「なぜバイデンは2024年に再出馬すると語ったのか?」です。ジョー・バイデン米大統領は3月25日、初めて記者会見を開き、24年大統領選挙に再出馬する意欲を見せました。もちろん、公式の出馬宣言ではありませんが、どうしてこの時期に再出馬をすると記者団に対して強気の発言ができたのでしょうか。本稿ではその理由を中心に述べます。

(AP/AFLO)

好調な支持率

 まず、支持率が背景にあります。ロイター通信とグローバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスによる共同世論調査(21年3月24~25日実施)によれば、バイデン大統領の支持率は53%で、不支持率は41%です。1月20日の就任以来、バイデン氏は50%台の支持率を維持しています。

 党派別にみますと、民主党の支持率が90%、無党派層が52%、共和党が15%になっています。特に民主党の支持率は就任式以来、87%から94%の間で推移しており、高水準の支持率を得ていることが分かります。ドナルド・トランプ前大統領の昨年の支持率と比較すると、バイデン氏は明らかに無党派層から支持を獲得しています。

 さらに、バイデン大統領の支持率を争点別にみてみましょう。ロイター通信とイプソスによる共同世論調査(21年3月17~18日実施)では、米国民の65%が「新型コロナ対策」、52%が「雇用」と「経済一般」、51%が「人種と平等」「国家の統一」及び「環境」をそれぞれ支持すると回答しました。共和党はこれらの分野では、バイデン氏に勝ち目がないといえるかもしれません。

22年中間選挙と24年大統領選を見据えて

 米議会で1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済支援法案(通称「米国救済計画」)が成立すると、バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、ファーストレディのジル・バイデン氏及びセカンドジェントルマンのダグラス・エムホフ氏は、東部ペンシルべニア州、ニューハンプシャー州、ニュージャージー州、南部ジョージア州、西部コロラド州、ニューメキシコ州及びネバダ州を訪問しました。

 その目的は各州で追加経済支援法案の成立をアピールして、米国民が同法案から得るメリットを強調することです。例えば、1人当たり最大1400ドル(約15万円)の現金給付が支給されます。4人家族には5600ドル(約60万円)が支給されます。

 上で挙げた州はニュージャージー州を除き、22年中間選挙で民主党上院の候補が戦う州です。加えて、24年大統領選挙で勝敗の鍵を握る激戦州も含まれています。特に注目するのはジョージア州です。

 バイデン氏とハリス氏は揃って3月19日、ジョージア州を訪問しました。今年1月に行われた同州の連邦上院選の決戦投票で、民主党のジョン・オソフ上院議員とラファエル・ワーノック上院議員が勝利を収めました。その結果、同党は2議席を獲得して上院で多数派になりました。

 補欠選挙で勝ったワーノック氏は来年再選の選挙を迎えます。バイデン・ハリス両氏のジョージア州訪問は、次の中間選挙と大統領選挙を見据えたうえでの訪問であったことは間違いありません。是が非でも同州を死守するという両氏の意気込みを読み取ることができます。


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