尖閣諸島の領有権問題をめぐって日中関係が緊張が激化するあおりを受けて、9月下旬から10月上旬にかけて経済ニュースでも日中間の問題が目立った。
経済問題にも波及
尖閣問題自体は政治・外交分野の問題だが、日本政府による9月11日の尖閣諸島の国有化をきっかけに中国各地で広がった大規模な反日デモでは、日本から進出したスーパーや電機メーカーの工場などが破壊された。デモの名の下で暴徒化した集団に日本企業が攻撃された形で、こうした状況を受けて尖閣の問題は一気に経済問題に波及した。経済ジャーナリストの出番だが、折しも中国の景気が減速してきていたなかで、中国リスクが強く意識され、新聞各紙やテレビ報道もそこに着目した報道が続いた。
まずは15日に起きた日系スーパーでの破壊、略奪行為などが大きく報じられ、その後も被害金額などの報道が続いた。デモが中国当局の主導で急速に沈静化してくると、次第にメディアの関心は簡単には表面化しない部分に移る。
それは中国の対日圧力の部分だ。典型的だったのは、中国側の通関の強化の動き。朝日新聞が9月21日に「日本製品の税関検査強化 中国・天津、企業に通告」と一面で大きく報じ、各紙も追随した。日本経済新聞の22日北京発の記事「中国、じわり対日圧力」もその関連記事の一つだ。税関の検査の制限は伝統的に気に入らない国への「嫌がらせ」の一つであり、かつて1980年代には、日本によるフランスへの輸出が拡大し、当時のミッテラン政権は対抗措置として日本からのビデオデッキの通関業務を地方都市の税関に限定して行った。事実上の輸入制限であり、これは貿易摩擦を象徴する事例として当時有名になった。
「政冷経冷」
関係回復のめど立たず
こうしたことを受けて日本国内にも大きな影響が出てきた。産経新聞は9月26日に路線の中国便のキャンセルが5万席に登り、中国からの団体客、日本からのツアー客が激減していることを報じた。極めつけは中国での日本車の減産だ。毎日新聞は27日、「自動車『中国リスク』 各社減産、業績影響も」と報じ、他の新聞の多くも同様の記事を掲載した。 読売新聞も10月5日、「トヨタ、中国販売半減 9月、反日デモ響く」と一面で報じ、事態の深刻さが一段と顕在化してきた。