2024年11月25日(月)

解体 ロシア外交

2012年10月11日

選挙当日
意外にも平和的、民主的

透明な投票箱で不正を防ぐ

 こうして迎えた選挙は、大きな混乱もなく、平和的、民主的に行われた。今回の議会選挙は77議席と、小選挙区73議席(合計150議席)で争われた。グルジアでは、透明の投票箱が用いられ、人々は投票用紙を封筒に入れて投票する。そのため、事前に投票用紙が隠されている可能性は極めて低くなる。また、入院中や寝たきりの人のために、同じく透明かつ小型の可動式投票箱も用意されており、担当者が規定時間内に出張して投票してもらうシステムも取っているため、投票の機会均等はかなり保障されている。

 選挙プロセスに関しては、国際監視団よりも、むしろ国内の監視員の方が厳しい目で選挙を監視していた。ほとんどの主要政党は各投票所に一人以上の監視員を送り込んでおり、また、NGOなどからの監視員もいた。特にGDや与党・統一国民運動(United National Movement、以後UNMと略記)の監視員はビデオを持ち込み、選挙の開始前から開票終了まですべてのプロセスをビデオに撮っていた。あるGDの監視員によれば、特別のソフトが配布されており、そのビデオはGDの中央事務所に逐次転送されているとのことだ。

 そのため、政党の監視員がしばしば選挙プロセスに介入する様子が見られたし、投票所の外では、各政党の支持者が言い争う場面も多々見られた。例えば、ある投票所では、GDのメンバーが筆者に「UNMはリストで投票者を管理しており、投票した人に贈与しているので、その場面を写真にとって、選挙管理委員会に訴えてくれ」と言ってきて、ちょっとした騒ぎとなった。実際に、筆者はそのリストは確認したが、贈与については確認できず、また、国際選挙監視員は選挙プロセスへの介入は禁じられているため、それについては何も関与しなかった。

 とはいえ、午後には選挙の出口調査により、GDおよびUNMの両方が一時、勝利宣言をするに至った。この背景には、極端な「地域差」と「投票所の差」があると思われる。例えば首都トビリシではGDが強く、またイヴァニシュヴィリの出身地は100%に近い投票がGDに集まったという。他方、例えば軍や警察の投票所では、100%に近い投票がUNMに寄せられ、一部の地方でもUNMが強かった。

 ともあれ、こうして夜8時に投票所は締め切られ、それから開票作業が始まった。グルジアの選挙はまだコンピュータ化されていないため、署名等も手書きであり、開票前の手続きにやり直しも含め、2時間以上を要した。そして開票が始まったが、それらのプロセスのほとんどが投票所の代表一人にかかっており、その人物の緊張度については言葉もないほどであった。なにしろ、多くの監視員がビデオ撮影もしながら凝視しており、何かちょっと手違いがあると、ものすごい勢いで色々と言われるのである。本当に見ていて気の毒だった。この様子は、国際監視団は「透明性がありすぎる」と感じるほどだったのだ。

 こうして、一部の不正(例えば、上記可動式投票箱に一部、不当な票が入れられていた、など)も報告されていたし、GDメンバーの一部が選挙の不正を主張するケースもあったが(例えば、GDの最主要メンバーの一人であるアラサニアは落選し、不正があったはずだと主張したが、これは負け惜しみであろう)、概して極めて民主的かつ公平に選挙は行われた。


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