2つの「ビックプラン」
バイデン大統領は1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済支援法案(通称「米国救済計画」)を米議会で成立させると、即座に2兆ドル(約218兆円)規模のインフラ投資計画(通称「米国雇用計画」)を米議会に提案しました。インフラ投資計画は、橋、道路、空港の整備といった従来型のインフラよりも、高速ブロードバンドの拡大や、50万カ所の電気自動車用充電ステーションの設置など、21世紀型に焦点が当たっています。
この2つの「ビッグプラン」は米国民から支持を得ています。世論調査で有名な米マンモス大学(東部ニュージャージー州)の調査(21年4月1~5日実施)によれば、63%が「米国救済計画」を支持しました。特に、「強く支持する」は同年3月の35%から43%に8ポイントも上昇しました。
では、米国民はインフラ投資計画をどのように受け止めているのでしょうか。上で紹介したクイニピアック大学の世論調査では、44%が「支持する」、38%が「支持しない」、19%が「分からない」と回答しました。米国民の約2割が態度を明確にしていないものの、支持が不支持を6ポイントリードしています。
加えて同調査では、「仮に法人税増税によって財源を確保するとしたら、インフラ投資計画を賛成しますか、それとも反対しますか」という質問に対して、53%が「賛成」、39%が「反対」と答えました。賛成が14ポイントも上回りました。つまり、バイデン氏の法人税増税によるインフラ投資計画の実施が米国民から支持を得ているということです。
「共感・敬意型リーダーシップ」
クイニピアック大学の調査では、米国民の52%がバイデン大統領のリーダーシップスキルを評価しています。昨年の大統領選挙でもそうでしたが、大統領に就任してからもバイデン氏は、新型コロナウイルスの犠牲者を出した家族の悲しみに寄り添った言動をとっています。例えば、常に上着のポケットに死者数を明記したカードを入れています。これも同氏が米国民から支持を得ている一要因でしょう。
アフガン戦争に終止符を打つために4月14日(現地時間)、バイデン大統領は同時多発テロ発生から20年を迎える9月11日までに、同国の駐留米軍の完全撤退を完了すると正式に発表しました。その際も、アフガニスタンやイラクで戦死した米兵士と家族に対して共感と敬意を示しました。
バイデン氏は「2448人の命が奪われ2万722人の負傷者が出た」と述べたとき、神聖な人間の命について「約」という言葉を使用するべきではないと主張しました。死者数の繰り上げ繰り下げに反対して、「約2500人の命」ないし「約2400人の命」という表現を使いませんでした。
ホワイトハウスでの演説で、バイデン大統領は首都ワシントンにあるアーリントン国立墓地の「セクション60」に埋葬されているアフガニスタンで戦死した米兵士について言及しました。その後、セクション60に向かい献花を行いました。このようなバイデン氏の「共感・敬意型リーダーシップ」が遺族の心を確実につかんでいるでしょう。