2022年12月4日(日)

中東を読み解く

2021年4月19日

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“第二のサイゴン”に現実味

 しかし、バイデン大統領の決定は結局、「アフガニスタン政府を見捨てた」ものであり、同国に軍事介入した末、混乱を放置して逃げたというそしりを受けかねない。政治的には大きな賭けだ。野党共和党のマコネル上院院内総務は「選挙で選ばれたアフガン政府への裏切り」と批判、トランプ氏の盟友で、保守派のグラム上院議員は「新たな9・11に備えた保険政策の放棄」と手厳しい。

 トランプ前政権との和平後、米軍への攻撃を控えてきたタリバンは約束破りと反発、「全外国軍が撤退するまでいかなる会議も欠席する」との声明を発表。トルコで今月後半に開催予定のガニ政権との和平協議をボイコットすることを明らかにした。

 米軍が撤退した場合の見通しは極めて暗い。国連によると、現在でも内戦の犠牲は7年連続3千人を上回るなどタリバンと米国の和平合意後も戦闘が沈静化する兆しはない。米専門家グループが2月に公表した米議会報告書は、米軍がアフガンから全面撤退すれば、国家崩壊を招いて内戦が激化すると警告した。

 米国家情報長官が最近発表した報告書によると、向こう1年の和平の見通しは暗く、米軍が撤退すれば、タリバンが占領地を拡大すると予想。政府軍は主要都市の支配を維持するものの、タリバンから占領地を奪還するのは困難と厳しい見通しを示している。米紙は米当局者の発言として、ベトナム戦争時に陥落したサイゴンに言及し、カブールが“第二のサイゴン”になる恐れを指摘した。

 最悪のシナリオは米軍の撤退後、タリバンが各地で全面的な攻勢に出て、政府軍の敗北が続き、最終的にはカブールが陥落。政府首脳らが逃亡を図り、逃げ遅れた要人らがタリバンに殺害されるか、捕虜となる。タリバンは全土にイスラム原理主義色の濃い政令を出し、そうした中で捕まった政府の要人らが即決裁判で処刑されていくという筋書きが見えてくる。

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