オトナの教養 週末の一冊

2021年4月27日

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アメリカと中国が乗り出し代理戦争になって
国土が灰燼に帰せればいい

 「欧米や日本が提唱する経済制裁は効果がありますか?」

 「意味ないと思います。ロシアは国軍に武器輸出を続けるし、中国、タイ、インド、ラオスなど国境を接する国々は今年も3月27日の国軍記念日に代表を派遣したように、国軍の政府との経済関係を継続するつもりです」

 中国、タイ、シンガポールなど、ミャンマーの貿易上有力な国々が態度を変えない限り、「経済制裁」は空念仏だと言う。

 「知人のミャンマー人が言ってました。内戦が大規模化し、アメリカと中国が乗り出し代理戦争になって国土が灰燼に帰せればいい、と。そしたらゼロから再生できる。驚くべき発想ですが、法隆寺の玉虫厨子に飢えた虎に前世の釈迦が身を投げる捨身飼虎図があるように、輪廻転生を信じる仏教の捨身思想。それがミャンマー人の精神世界にあるんです。相手に呪いをかける黒魔術も、民主派と国軍、両者がやり合っていると思いますよ」

 表は輪廻転生の上座部仏教、裏が黒魔術を使う占星術。それがミャンマーという国、らしい。

 「どうすればいいのでしょう?」

 「今は、何もできないでしょうね。本当は、国軍とNLDがとりあえず二人三脚を維持していたテインセイン政権の状態まで戻ることができればいいんでしょうけど」

 となると、本書は別の読み方ができそうだ。

 国軍が特権階級として利権を独占してきた弊害はあるものの、国軍公認の「内なる民主化」政策によって、検閲が廃止され、言論の自由が広がり、外資が次々に進出し、目に見えて人びとの暮らしが豊かになった時代(2011年~16年)が具体的にどうだったか、を知る手がかりである。

 「しかもあの頃の社会変化、無血でした」

 本書の再読、再々読が必要ということかもしれない。

  
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