2022年11月30日(水)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年5月11日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

トランプ支持者を批判する共和党支持者

 保守系の米FOXニュースが行った世論調査(21年4月18~21日実施)では、全体で22%が「ワクチン接種をする予定はない」と回答しました。現状のままでは米国民の約2割がワクチン接種を受けない可能性があります。集団免疫を作り、今年の7月4日の独立記念日までに「ウイルスからの独立」を目指しているバイデン政権にとって、ワクチン接種に否定的な有権者は阻害要因となることは確かです。

 同調査によれば、ワクチン接種をしない理由のベスト5は、「ワクチン開発が早急であった。ワクチン接種を受ける前により多くのデータが欲しい」(28%)、「ワクチンの有効性を信用していない」(16%)、「新型コロナウイルス感染を心配していない」(10%)、「副作用」(9%)、「連邦政府を信用していない」(9%)でした。米国民の中に、ワクチンに対する強い懐疑心があることがはっきり読み取れます。特に、ティー・パーティーの活動家は連邦政府を信用していません。

 そこで、西部コロラド州コロラドスプリングス在住のIT企業のCEO(最高経営責任者)で、共和党保守派の白人男性A氏(64)に、ワクチン接種とトランプ支持者に関してインタビューを行いました。A氏は共和党支持者ですが、20年米大統領選挙でバイデン氏に投票した「隠れバイデン」です。

 「65歳以上の高齢者が優先的にワクチンを接種できます。妻は65歳ですが私は64歳です。当日、妻が64歳の私を一緒に連れて行ってもいいのか接種会場の担当者に尋ねると、ワクチンが余っているのでOKだと言ってくれました。妻のお陰で私も接種できました。すでに接種を2回受けました」

 ワクチン接種を完了したA氏は、柔軟に対応してもらったことを明かしました。続けて、ワクチン接種を拒否するトランプ支持者について以下のように語りました。

 「トランプ支持者はまるでラッダイト運動に参加した人たちのようです。要するに無知なんです。教育を受けていない人たちです」

 ラッダイト運動は19世紀にイギリス各地の織物工業地帯で発生した「機械打ちこわし」運動です。多数の経営者が手織りから自動織機に切り替えたことで、労働者が失業の危機に直面し、機械打ちこわし運動を起こしました(本田康二朗「21世紀のネオ・ラッディズム―人工知能が引き起こす労働問題」参照)。

 もちろん、米国ではトランプ支持者によるワクチン生産工場の破壊行為は報告されていません。それでもA氏は技術革新に否定的な態度をとったイギリスの労働者と、科学を信用しないトランプ支持者との間に類似点を見出していました。

 加えて、A氏はトランプ支持者に関して次のように厳しい指摘をしました。

 「米国の精神は『できるという態度(can-do attitude)』です。トランプ支持者は失敗しても自分たちが被害者だと思い込んでいます。メキシコが悪いとか言って、他者を非難します。彼らの精神は米国の精神とは真逆です」

 A氏は自動織機に対応できずに自分たちが被害者だと思い込んだイギリスの労働者と、不法移民や中国に職を奪われたと主張するトランプ支持者を重ね合わせていました。

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