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2012年10月24日

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石川和男 (いしかわ・かずお)

政策アナリスト

1965年生まれ。89年東京大学工学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。電力・ガス自由化や再生可能エネルギー開発振興、環境アセスメントなどに従事。2007年に退官後、内閣官房企画官、内閣府規制改革会議専門委員などを歴任。現在、社会保障経済研究所代表。著書に『原発の正しい「やめさせ方」』(PHP新書)など多数。

 原発ゼロなのに再処理を続ければ、核兵器への転用が可能なプルトニウムが日本に溜まり続けてしまう。米政府は、イランや北朝鮮に核不拡散を迫っていることもあり、原発ゼロを掲げるなら再処理は放棄せよと、訪米した長島昭久首相補佐官(当時)らに要求したと報道されている。

 「米側からの指摘で判断を変えたということはない」と政府はコメントしているようだが、そうでなければ困る。米国に要求されに行ったのではなく、要求させに行ったのが実態と心底願いたい。もし真っ白な状態で訪米し、米国に要求されて初めて核燃料サイクル政策との整合性を考えたのであれば、民主党政権を選んだ国民は赤っ恥である。

 新戦略にプルトニウムの問題が触れられていない時点で、資源エネルギー庁の担当者がまじめに見ていないか、そもそも見せられていないかのどちらかだと筆者は感じた。

 新戦略に掲げられた原発ゼロへの道筋は、非現実的すぎる。省エネルギーは、30年段階の1次エネルギー供給量で10年比19%、発電電力量で10%の削減を見込む(累積投資額38兆円)。1990年度から10年度までの20年間で発電電力量が約3割増えたことを考えれば、この省エネ計画は我慢の限界を超越している。

 再生可能エネルギーの拡大は、水力を除くと、10年段階で250億kWhしか入っていないのに、これから20年で約8倍の1900億kWhまで拡大させるという。累積投資額は38兆円。住宅用太陽光ひとつとっても、設置可能な戸建住宅の8割に導入しなければならない規模だ。無理筋としか思えない。

 そして何より原発ゼロは、日本のエネルギー資源基盤の脆弱性を無視している。ウラン燃料は化石燃料より価格が安く、体積の小ささ(石油の約7万分の1)から流通・備蓄コストも安い。日本人は2度のオイルショックを思い起こすべきだ。某資源国関係筋からは「日本人は豊かですね」と半ば嫌みな感じで言われた。投資家筋からもこうした指摘が多い。わざわざ原子力を停止して高い液化天然ガスを買ってくれる日本は「金づる」にしか見えないのだろう。「一億玉砕」の再来である。

 性急な脱原発は、これまでの原子力への投資をすべてサンクコスト(埋没費用)に変えてしまう。原発は建設費が高くつくが、その償却さえ終われば、あとは安い燃料費だけで運転できるため、40年動かせば(安全性の個別判断によりそれは35年にも45年にもなり得る)、十分な廃炉財源や、万が一の事故による賠償費用を積み立てることができる。脱原発を急げば急ぐほど廃炉も賠償も財源調達が難しくなることを、政府は認識していただろうか。

原子力事業の国家管理化を

 政府が次なる大テーマに掲げているのが、電力システム改革である。一言で言えば、発送電分離を通じた「電力全面自由化」だ。

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