2022年12月6日(火)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年6月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

戦略的な演出

 バイデン氏はG7サミット開催の前日に、議長国英国のボリス・ジョンソン首相と「新大西洋憲章」に著名しました。これにも明確な意図がありました。

 そもそも大西洋憲章は1941年にフランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相(共に当時)が、ファシズムに対抗するために発表した共同宣言です。新大西洋憲章はいわゆる現代バージョンで、中国やロシアを念頭に専制主義に対峙するものです。

 バイデン政権の政府高官は新大西洋憲章に関して、「2人のリーダー(バイデン・ジョンソン両氏)と他の民主主義国のリーダーは、民主主義は世界を統治するための最高のモデルであると信じている」と、記者団に語りました。バイデン大統領とジョンソン首相は、中国及びロシアの専制主義から民主主義の原則と価値観を守り抜く決意表明を、新大西洋憲章によって戦略的に演出したといえます。

バイデンの新たな対立構想「B3W」

 ドナルド・トランプ前大統領は4年間、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対して、有効な対策を講じてきませんでした。それに対して、バイデン氏は「よりよい世界の復興(Build Back Better World: B3W)」を立ち上げて、対立軸を築きました。

 「一帯一路」について「素晴らしいネーミングである」と高く評価する声が一部にありますが、英語の訳では「Belt and Road Initiative: BRI」になり、効果的な命名とは言えないかもしれません。

 バイデン氏の「B3W」は、「BRI」に対抗するために、中低所得国に対してインフラ整備を行う構想です。その際、米国開発金融公社(DFC)、米国国際開発庁(USAID)、合衆国輸出入銀行(EXIM)、ミレニアム・チャレンジ・コーポレーション(MCC)、米国貿易開発庁(USTDA)といった政府系機関から中低所得国へ資金援助を行い、巻き返しを図ります。

同盟国との関係改善

 米ABCニュースとグローバル・マーケティング・リサーチ会社イプソスがG7サミットの最中に行った共同世論調査(21年6月11~12日実施)によれば、「ジョー・バイデン大統領が外交で正しいことをする自信がどのぐらいありますか」という質問に関して、57%が「多いにある/いくらかある」と回答しました。一方、42 %が「あまりない/全くない」と答えました。バイデン外交に「自信がある」が「自信がない」を15ポイントも上回りました。

 同調査では、「ジョー・バイデン大統領の下で、世界における米国のリーダーシップはより強くなったと思いますか」という質問に対して、44%が「より強くなった」、36%が「より弱くなった」、19%が「変わらない」と答えました。こちらも、「より強くなった」が「より弱くなった」を8ポイントですがリードしました。加えて、51%が「同盟国との関係改善」を最優先課題として挙げました。

 米国民はバイデン氏の「米国は世界の舞台に戻った」というメッセージを肯定的に受け止め、トランプ政権時代に崩れた同盟国との信頼関係の再構築を求めています。

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