トランプ時代の終止符
ドナルド・トランプ前大統領とバイデン大統領を比較した米ピュー・リサーチセンターの世論調査(21年3月12日~5月26日実施)も紹介しましょう。この調査は16カ国を対象に行われました。対象国は、カナダ、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国、オーストラリア、日本、ニュージーランド、シンガポール、韓国及び台湾です。米国以外のG7サミットのメンバー国が全て含まれています。調査結果はG7サミット開催直前に発表されました。
同調査によれば、米国に対する好感度は62%、非好感度は36%です。20年は好感度が34%で、非好感度は63%でした。つまり、トランプ政権からバイデン政権に移行して、米国の好感度が28ポイントも上昇したことになります。一方で、非好感度は27ポイントも下がりました。
「バイデン氏は大統領に適任ですか」という質問に関して、77%が「適任である」と回答しました。17年の同調査では16%が「トランプ氏は大統領に適任である」と答えました。バイデン氏と60ポイント以上も差があります。
また、72%がトランプ氏を「危険」、90%が「傲慢」と回答しました。これに対して、21年の調査では14%がバイデン氏を「危険」、13%が「傲慢」と答えました。調査対象国において、バイデン氏に対する警戒心はトランプ氏と比較してかなり低いといえます。
さらに、リーダーシップに関する調査結果にも注目してみましょう。17年の同調査では、46%がトランプ氏を「強いリーダー」と答えました。一方、21年の調査では62%がバイデン氏を「強いリーダー」と回答しました。ここでも、バイデン氏がトランプ氏を16ポイント引き離しています。
世論の支持を背景にしてバイデン大統領は、G7サミットで主要国との関係改善を図り、トランプ時代に終止符を打ちました。同様に、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議並びにEUサミットにおいても、トランプ前大統領とのギクシャクした関係を修復して、そのうえで民主主義諸国の代表として専制主義国ロシアとの会談に臨みたいというバイデン氏の思惑があったといえます。
今回の一連の外遊でバイデン氏が強いリーダーシップを発揮して、民主主義諸国を結束させたという印象を米国民に与えたならば、帰国後の内政における同氏の立場は以前よりも強くなる可能性があります。
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