寒風吹く師走の空の下、鉢巻きに褌姿(ふんどしすがた)の裸男の一群が、掛け声とともに長良川の清流に入っていく。そんな光景で知られるのが、岐阜市池ノ上町(いけのうえちょう)にある葛懸(かつらがけ)神社の池ノ上みそぎ祭(まつり)だ。
古くから伝わる祭りだが、その起源は分かっていない。天文3(1534)年に起きた大洪水で川の流れが変わり、新川(現在の長良川)ができるまでは、神社前にあった大池でみそぎが挙行されていたとの伝聞が残る。
「みそぎは午後3時、そして夜の7時と10時の合計3回実施します。昨年はのべ570人がみそぎに参加しており、昼間のみそぎには130人ほどの子どもたちも加わっています。地元ではこの祭りが終わらないと正月が来ないといわれるほど、一年を締めくくる大切な行事となっています」
と、祭典委員長の北川英(すぐる)さん。
池ノ上みそぎ祭では、みそぎの主宰者として正禰宣(ねぎ)と副禰宜が選出される。正・副禰宜とも、祭りに先立つ3日間は肉食をせず、自分の炊事の火を分ける別火(べっか)をするなど、心身ともに祭りに備える。
当日は、午後1時30分に神社で祈祷やお祓いの神事があり、その後、神社裏手の池ノ上公民館で、白地に赤い文字を染め抜いた、そろいの鉢巻きと褌に着替えた参加者は、禰宜を中心に川原のみそぎ場まで練り歩く。1回目のみそぎの後には、餅まきなどの余興も催される。そして3回目のみそぎが終わり、深夜0時になると、神様をお迎えする神迎祭(しんげいさい)の神事が執り行われる。
祭りは当日飛び入り可で、公民館では鉢巻きと褌を無料配布する。毎年遠方を含む全国各地から、みそぎのためにやってくる人も少なくないとか。
「伝統行事がすたれていくご時世ですが、こういう祭りが続いていることを知ってもらえるとうれしいですね。寒さもひとしおの時期だけに、みそぎをすると身の引き締まる思いがしますよ」
身も凍るような清流で、一年の穢(けが)れを流し去り、新しい年を迎える気分は爽快に違いない。
池ノ上みそぎ祭
<開催日>2012年12月8日
<会場>岐阜市池ノ上町・葛懸神社および長良川の忠節橋下流のみそぎ場(東海道本線岐阜駅からバス)
<問>みそぎ祭奉賛会☎058(232)8770
http://www.city.gifu.lg.jp/c/40122475/40122475.html
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